銅貨一枚のコロッケ
小人族の仕立師ピッカは、商店街の肉屋で揚げたてのコロッケを見上げた。
彼女の背丈では、硝子ケースの上段まで顔が届かない。店員が紙袋へ一つ入れ、台の端まで下ろしてくれた。
「銅貨一枚で、本当に?」
「今日は交流市の値段です」
明日は仕立組合の創立祭だった。毎年、親方が大鍋料理を振る舞う。今年は病で休んでいるため、代わりにピッカが用意することになった。だが高価な香草も肉も買えず、皆に貧しい食卓だと思われるのが怖かった。
紙袋を開くと、揚げ油とじゃがいもの甘い匂いが上がった。丸く平たい衣は、指先で触れただけでかさりと鳴る。
火傷に気をつけて半分に割る。中には白いじゃがいもと、少しの挽肉、飴色の玉葱。豪華な材料は何もない。
一口食べると、衣がさくっと砕け、熱い芋が舌の上でほどけた。胡椒が後から来て、ソースの酸味が甘さを引き立てる。ピッカは夢中で頬張り、慌てて息を吹いた。
「こんなに安いのに、ごちそうの音がする」
店員は揚げ鍋を見ながら笑った。
「揚げたては、値札より強いですから」
ピッカは二つ目を買い、今度はソースなしで食べた。じゃがいもの匂いがよく分かり、昔、工房の炉端で焼いた芋を皆で分けた夜を思い出す。
「人数分、作れますか」
「材料なら、じゃがいもと玉葱を多めに。肉は少なくても大丈夫」
「衣は厚く?」
「薄くても、揚げたてなら喜ばれます」
祭りで立派に見せることばかり考え、自分の前掛けのほつれさえ放っていた。ピッカは店先の椅子へ座り、小さな針箱を出した。紙袋の温かさを膝に置いたまま、まず自分の前掛けを三針だけ縫う。
縫い終えた前掛けの糸を噛み切ると、揚げた衣の香りがもう一度ふわりと立った。
翌日の仕込み用に、じゃがいもの袋を注文した。持ち帰れない分は店から工房へ届けてもらう。
帰り道、指には薄くソースがつき、鼻の奥には揚げたパン粉の香りが残っていた。明日の食卓には宝石も香草もない。それでも、皆が噛んだ瞬間に同じ音が鳴ると思うと、ピッカの足取りは軽かった。