鐘を鳴らした埋葬
聖女カルミナが大聖堂を追放されてから、最初の葬儀が行われた。
亡くなったのは八十歳の靴職人だった。病死で、恨みも呪いもない。司祭が祈り、棺へ土をかけ、埋葬の鐘を鳴らした。
三打目で、土の下から拳が突き出た。
参列者が悲鳴を上げる。棺を破った老人は、白く濁った目で家族へ歩き出した。兵が取り押さえる間に、隣の墓、その隣の墓でも蓋が動く。鐘の音を合図に、古い死者まで起き上がった。
司祭たちは聖水を撒いた。動きは鈍ったが、止まらない。浄化の光は死体を焼き、遺族の泣き声だけを増やした。
司教オルヴェドは地下書庫で、歴代埋葬簿の末尾に同じ小さな印を見つけた。
――カルミナ、帰路封印済み。
彼女は死者を蘇らせない聖女ではなかった。魂が去ったあと、肉体へ戻る道を一人ずつ閉じていた。奇跡が成功すれば何も起きない。だから大聖堂は、何も起こさない彼女を「葬儀で立っているだけ」と追い出した。
墓地は封鎖され、次の葬儀は延期された。死者を家へ置くしかなくなり、町じゅうの窓に弔布が下がった。
大聖堂は急きょ火葬を命じたが、起き上がった死者は火を恐れず、松明を持つ司祭へ歩いた。遺族は家族を焼くことにも、動く遺体を置くことにも同意せず、葬儀場は閉ざされた。町は一日で、死者を悼む場所と埋める場所の両方を失った。
鐘楼の下では、次に亡くなった者をどうするかで家族同士が争い始めた。死者が増えるほど、埋葬を待つ列だけが長くなった。
同じ日、辺境集落では戦死した狩人が静かに土へ還った。カルミナは棺へ手を置き、最後の扉を閉じる。墓守ユンガが深く頭を下げた。
「ここでは魔獣に食われた者が戻ることもある。家族が二度別れずに済むなら、あなたの祈りは砦より大事だ」
集落は彼女を聖堂の飾りにはせず、墓地管理人として名簿の一番上へ置いた。
夕暮れ、大聖堂から鐘と同じ音で通信石が鳴った。
「帰って全墓地を鎮めよ。聖女位を戻す」
カルミナは新しい埋葬簿を閉じた。
「教区の帰路封印契約は、破門宣告が下された日に終了しました」