雨を呼べなかった聖女の行き先

聖女候補ミレーヌは、旱魃の村で雨を呼べなかった。

祈りを三日続けても空は青いまま。神殿は「信仰不足」と告げ、彼女の白衣を回収した。村人に石を投げられる前に去れ、と護衛さえ置いていった。

だが村の門には、別の三人が待っていた。

辺境守備隊の将校グレゴルは、腰の剣を鞘ごと彼女へ差し出した。

「雨がなくても井戸は掘れる。隊の水源係として来てほしい。判断を預ける」

薬草園主パルミアは、馬車の隣席に籠を置かず、ミレーヌのために空けていた。

「露を集める草を育てましょう。手を貸して」

旅商人トパズは、村外れに天幕を張り、帰り道のランタンを灯した。

「神殿へ戻りたくないなら、どの町まででも送る。出発はあなたが決めて」

誰も雨を降らせろとは言わなかった。

グレゴルは空になった水筒を責めず、パルミアは枯れた葉を「まだ根がある」と包み、トパズは神殿の悪評が書かれた号外で天幕の隙間を塞いだ。ミレーヌ自身より先に、三人は彼女の失敗を役目から切り離していた。

その優しさが怖くなったとき、遠くで雷が鳴った。ミレーヌは反射的に祈り、最後の聖力を空へ放つ。

落ちてきたのは雨ではなく、拳ほどの雹だった。薬草畑の若芽を打ち、守備隊の馬を怯えさせ、商人の天幕に穴を開ける。

三人が立ち上がった。

やはり去るのだ。ミレーヌは濡れてもいない頬を拭った。

「ごめんなさい。私を誘ったことは忘れて。どこへ行っても、駄目にするだけです」

次の瞬間、グレゴルは剣の鞘で畑に溝を掘り、溶けた雹を井戸へ導いた。

パルミアは傷ついた若芽に布をかぶせ、トパズは穴の開いた天幕を村の子どもたちへ広げる。雹を集める即席の樋になった。

「水だ」とグレゴルが言う。

「若芽は折れても根が生きている」とパルミア。

トパズは氷粒を手桶へ落として笑った。

「失敗なら、飲める失敗に変えればいい」

村人が桶を持って集まり始めた。

剣はミレーヌの傍らに置かれ、馬車の隣席は空き、帰路のランタンは消えない。三人は雹が解けるまで残った。

雨を呼べなかった聖女にはその日、空ではなく三つの場所から、帰っておいでという道が伸びた。