青い灯が射抜いたもの
灯手ティサの持つ青いランタンは、暗い洞窟でも足元を照らさなかった。
「役立たずの灯りだな」
弓将ネグルは笑い、白い魔法灯を先頭へ浮かべた。戦果盤の仮評価は1%。ティサは戦闘中もランタンを掲げるだけで、矢も魔法も放たない。
標的の虚影豹は、身体を霧に変える。白い光の中では輪郭すら見えず、気づいたときには誰かの背後に爪が現れた。
ネグルが影へ矢を連射する。どれも岩壁へ刺さった。
ティサは青いランタンの覆いを少しだけ開いた。
青光は豹を照らさない。代わりに、洞窟の水滴へ細い線を引いた。霧の身体が通った場所だけ、水滴の揺れが途中で途切れている。
「線が欠けたところへ」
ティサが告げると、若い射手が半信半疑で矢を放った。何もない空間から黒い血が飛ぶ。
ネグルは歯を食いしばり、今度はティサの視線より先に射ようとした。だが矢はまた外れた。
青い線は獣の居場所ではなく、体内でただそこだけ霧になれない核が水滴を押しのけた跡を示していた。ティサはランタンを傾け、線の欠けを仲間の足元へ集める。豹は明るい場所を避けたつもりで、攻撃陣の中央へ誘導されていく。
「今です」
青い光がふっと消えた。
暗闇の中、射手たちは最後に見えた欠けへそろって矢を放つ。虚影豹は実体へ戻る暇もなく核を貫かれた。
帰還すると、ネグルは「目に見えぬ敵を勘で射抜いた」と報告した。ティサは煤けたランタンを磨いていた。
戦果盤が洞窟の光景を再現する。命中した矢の軌道はすべて、青い線が欠けた箇所と重なった。ネグルが独断で放った矢だけが、何もない壁へ並ぶ。
大広間の白い魔法灯が消され、ティサの青い灯だけが戦果盤を照らした。
若い射手がティサへ弓を差し出し、次はどこを見ればよいか尋ねた。彼女は矢先ではなく、青い光の途切れる場所を指す。ネグルの白い魔法灯は大広間の隅へ退けられ、隊列の先頭には煤けたランタンが掛けられた。
射手全員の矢筒が、いつの間にか青い灯の周りへ集められていた。
【再算定完了】
【ティサ・討伐寄与率:1% → 96%】
【隊内順位:最下位 → 首位】
【役職更新:灯手 → 不可視討伐長】