青瓦の下の一杯

トビアスが廃屋へ着いて最初に見つけたのは、台所でも寝台でもなく、井戸だった。

石組みは残っている。水も深く澄んでいる。だが井戸を覆う小屋の屋根が半分落ち、枯れ葉や鳥の羽が水面へ入り込んでいた。これでは飲めない。

王都で水質鑑定官をしていた頃、トビアスは宴会用の泉に混じった毒を三度見抜いた。四度目に見抜いた毒が王弟の命令で入れられたものだったため、「神経質な役人」として職を失った。

辺境の水は嘘をつかない。

今日直すのは、井戸の屋根だけ。

まず水面へ浮いた葉を網ですくい、古い桶の内側を塩で磨いた。屋根だけ新しくしても、汚れた道具で水を汲めば同じことだ。彼は誰も見ていない検査ほど丁寧に行った。

彼は崩れた垂木を外し、残った木材から使える部分を切り出した。廃屋の裏には青い瓦が積まれていた。どれも欠けていたが、欠けた部分を重ねれば雨は通らない。トビアスは一枚ずつ洗い、日の光に透かし、最も丈夫な順に並べた。

井戸の上で金槌を振るうたび、音が穴の奥へ落ちて、遅れて返ってくる。かん。……かん。まるで地の底にも職人がいて、同じ屋根を作っているようだった。

瓦の列は不揃いで、王都の噴水殿なら即座にやり直しを命じられただろう。けれど下から見上げると、濃淡の違う青が魚の鱗のように重なっていた。役目を果たす美しさなら、それで十分だった。

最後の青瓦を載せると、ちょうど小雨が来た。雨粒は瓦を滑り、井戸の外へ落ちる。水面は静かなままだ。

トビアスは桶を下ろした。縄が軋み、やがて冷たい重みが手に戻る。汲み上げた水を《鑑定》する。

【清浄。微量の鉄分。飲用に最適】

誰の命令書より、信用できる表示だった。

台所で湯を沸かし、野生の薄荷を入れる。青い香りを含んだ湯気が鼻をくすぐった。固いパンを炙ると、表面がぱちぱち鳴る。

垣根の外から、一人の少女が空の水差しを抱えて見ていた。近隣の家の子らしい。

「その井戸、苦いから飲むなって言われてるよ」

トビアスは二つ目の椀へ茶を注いだ。

「鉄の味だ。毒ではない。飲めるかどうかは、君が決めるといい」

少女は慎重に一口飲み、目を丸くした。薄荷の葉を噛んでから、もう一口。

「お母さんにも持っていっていい?」

トビアスは水差しを洗い、清水で満たした。少女は帰り際、青瓦を見上げて言った。

「明日から、うちもここへ汲みに来るね」

王都では、彼の鑑定を信じるかどうかを身分の高い者が決めた。辺境では、一杯を飲んだ子どもが自分で決めた。

青瓦を打つ雨音の下、トビアスは残った薄荷茶をゆっくり飲んだ。守った井戸には、もう次の桶を下ろす人がいる。