風が鳴らす七本の玉蜀黍
鍛冶師トバルは、剣を作らないと言ったため工房組合を除名された。
戦が終わっても武器の注文だけは減らず、彼は金床の音を聞くたび胸が重くなっていた。
そこで辺境の放棄地を買い、炉の裏へ玉蜀黍を一列植えた。
収穫の日、背丈を越えた茎に七本の穂が実っていた。
植えた二十粒のうち芽を出したのは十二本、実を結んだのは七本だけだ。組合なら歩留まりが悪いと怒鳴られただろう。トバルは七本もある、と数えた。ゼロから増えたものを、足りないとは思わなかった。
乾いた葉が風にこすれ、しゃらしゃら鳴る。剣同士がぶつかる音とは違う、急かさない音だった。
トバルは一本ずつ、実を下へ折った。
ぼきり、ぼきり。
大きさは揃っていない。先まで粒のないものもある。それでも七本すべてが、彼の土地で育った。
最後の一本を抱えたとき、組合の配達魔法人形が門を叩いた。
『親方トバルへ。王軍より聖剣百振りの特注あり。復籍を認める』
胸板に巻かれた注文書が、風にはためいていた。
百振り。以前なら、一生に一度の名誉だと思っただろう。
トバルは紙を抜き取らず、人形を納屋の軒下へ移した。
「雨が降ったら錆びるぞ。そこで待て」
炉へ炭を入れた。ただし鉄は置かない。
玉蜀黍の皮を一枚残して剥き、網の上へ並べる。やがて粒が黄色く艶めき、ぷつ、ぷつと弾けた。焦げた甘い匂いが、かつて鉄臭かった工房を満たす。
山羊乳のバターと塩を塗ると、表面でじゅうっと音がした。
一本かじる。粒が歯の下ではじけ、熱い汁が舌へ広がった。
不揃いな先端まで、驚くほど甘い。焼きむらの焦げさえ苦く香ばしく、指についたバターを舐めると塩気が残った。完成品を検品するように眺めたあと、トバルは自分で合格を出した。
魔法人形が再び同じ文句を読み上げる。
『復籍を認める』
「頼んでおらん」
トバルは二本目を火から上げ、空いている椅子へ置いた。
夕暮れ、通りかかった羊飼いの少年が匂いにつられて顔を出す。
「食うか」
少年が大きくうなずいた。
百振りの剣を打つはずだった炉で、七本の玉蜀黍がぱちぱち焼けている。
トバルはその音に耳を澄ませた。今日初めて作ったものは武器ではなく、明日も誰かと食べたいと思える夕食だった。