骨は主人を選ばない

処刑広場に並ばされた子どもたちは、誰も泣かなかった。

泣けば獣の血が混じっている証拠になる、と裁判官が言ったからだ。十歳にも満たない七人の胸へ、弩の照準が向けられている。

処刑場の番犬バスティンは、黒い鎧の内側で歯を食いしばった。兜の下には狼の口、背には曲がった脊骨。それでも二本脚で立ち、人の言葉を話せるうちは、彼は自分を元騎士だと思っていた。

彼の呪いは単純だった。誰かへの致命傷を身代わりに受けるたび、人骨が一本、獣の骨へ置き換わる。

「放て」

一斉に弦が鳴った。

バスティンは最初の子の前へ飛び出した。矢が胸を貫く。折れた肋骨が内側で太く伸び、狼の胸郭へ変わった。

二本目を肩で受ける。鎖骨が獣のものになり、右腕が地面へ近づいた。

三本、四本。子どもを突き飛ばし、矢の道へ身体を入れるたび、骨盤が狭まり、踵が持ち上がる。鎧が形に耐えられず裂けた。

兵たちは怯んだが、裁判官だけは叫んだ。

「見ろ、やはり怪物の仲間だ!」

五本目が少女の喉を狙う。

バスティンは四足で駆けた。もう剣を握る指はない。矢を牙で噛み、顎骨が完全な狼へ変わった。

六本目で背骨が伸びた。人間だった頃の姿勢を忘れ、地面の匂いが鮮明になる。

最後の矢は、列の端にいたユナクへ向かった。

少年だけが泣いていた。

「バスティン、だめだ!」

名を呼ばれ、彼は一瞬止まった。最後に残った人骨は、頭蓋の奥の小さな骨だった。それがあるから言葉を意味として聞けるのだと、呪いをかけた魔女は笑っていた。

矢が迫る。

バスティンは跳んだ。

衝撃とともに、少年の声がただの高い音へ変わった。

広場へ落ちたのは、鎧の破片と巨大な白骨犬だった。犬は矢を腹に刺したまま裁判官へ向き直り、血の泡を吹いて唸った。兵たちは弩を捨て、子どもたちは裏路地へ逃げた。

ユナクだけが残り、犬の首へ腕を回した。

「一緒に来て。僕だよ」

白骨犬は言葉を理解しない。それでも少年の匂いには、守るべきものだという痛みが残っていた。

犬は四本脚で立ち、彼の後を歩き出した。

広場には、元騎士バスティンの名が刻まれた首輪だけが落ちていた。犬は振り返りもせず、初めて与えられた主人のように少年の足跡を追った。