魔王様、王様ゲームをしましょう

遊び人パックは、魔王の玉座で縄をかけられていた。

剣士でも魔術師でもなく、酒場で札を配り、宴会で芸をするだけ。勇者隊は道中の退屈しのぎに連れてきたが、魔王城へ入る直前、「遊びは終わりだ」と彼を囮にして逃げた。

パックの職業技能は、子どもの喧嘩にしか使えないと笑われていた。

【職業技能《遊戯成立》:参加者全員が同意した遊びでは、定めた役割と勝敗条件を終了まで現実として扱う。】

玉座の周囲には、石に変えられた王族と騎士が並ぶ。魔王は退屈そうに頬杖をつき、パックへ最後の望みを尋ねた。

「何か芸を見せれば、死ぬ順番を遅らせてやろう」

「では王様ゲームを」

魔王は腹を抱えた。

「余に王を決める遊びを挑むか。よい。余が王であることを思い知らせてやる」

ルールは単純だった。箱から棒を一本ずつ引き、印のある棒を引いた者が一度だけ王になる。王の命令には全員が従う。魔王は自分の豪運を誇り、配下百人まで参加させた。

パックは箱を振った。

不正はない。印の棒は一本だけ。最初に引いた魔王は外れだった。次々と魔族が外れを引き、最後の一本がパックの手に残る。

広間から笑い声が消えた。

「玩具の印だ。現実の王権とは違う」

魔王が立ち上がろうとした瞬間、技能が役割を確定した。

玉座が魔王を拒み、王冠が宙を飛んでパックの頭へ載る。石像になった人々の視線が、一斉に新しい王へ向いた。

一度だけ。命令は一つだけ。

パックは逃げた勇者を呼び戻すことも、宝物庫を望むこともしなかった。

「魔王とその配下は、奪った命と自由をすべて返し、二度と人へ害をなすな」

魔王の膝が床へ落ちる。百の配下も同時に額をつけた。石像の表面に亀裂が走り、中から生きた人々が現れる。

魔王は歯を食いしばったまま、命令を拒めない。

パックは王冠を指で弾いた。

「遊びを馬鹿にする人ほど、ルールを読まないんですよ」

解放された王族は玉座を勧めたが、パックは一回きりの役だと断った。代わりに石像だった子どもへ札を配り直す。泣いていた広間に笑い声が戻り、跪いた魔王だけが、次の遊びへ参加させてもらえず唇を噛んだ。

【職業《遊び人》が上位職《遊戯律神》へ書き換わりました。】