鳴かない竜の世話係

蒼翼ギルドの騎竜舎で、ルゼルは声を荒らげなかった。

竜が餌を拒めば隣に座り、翼を広げなければ急かさず、騎手が近づくと尾を震わせる理由を探した。遠征へ出ない彼の貢献度は一%。騎竜団の者たちは、竜を飛ばすのは手綱を握る自分たちだと思っていた。

ギルド長ドガンは、式典の前でルゼルへ解雇札を渡した。

「餌やりに技術などない。数字が証明している」

ルゼルは竜たちの額へ触れ、鍵を置いて去った。

翌朝、騎竜団は飛べなかった。

鞍を載せると竜は伏せ、手綱を引けば牙を見せる。鞭を振り上げた騎手は尾で壁へ払われた。ドガンは獣が反抗したと怒鳴り、餌を減らせと命じた。

その夜、幼い灰竜が鎖を噛み切ろうとして口を傷つけた。甲高い鳴き声が街路まで届く。

荷車で通りかかったルゼルは、門の外で足を止めた。戻れば都合よく使われる。それでも、竜の声を無視することはできなかった。

彼は鍵を借りず、柵の前へしゃがんだ。手のひらを見せ、待つ。灰竜は震えながら鼻先を近づけた。ルゼルが鞍を外すと、その下から式典用の飾り針が見つかった。痛みの原因だった。

他の竜も次々に首を寄せた。彼は騎手を竜の前へ並ばせ、命令ではなく謝罪をさせた。やがて翼が開き、風が騎竜舎を満たした。

ドガンは周囲の歓声を見て態度を変えた。

「飼育係へ戻してやろう。今度は少し給金も――」

「戻るのは竜たちです。あなたの所有物としてではなく、仲間として」

騎竜舎の契約核が光り、飛行記録と世話の履歴を結んだ。騎手との相性、恐怖を解いた時間、事故を防いだ判断。そのすべてがルゼルの名へ集まる。

竜たちは役職章の意味など知らない。それでも光がルゼルへ移ると、翼をたたみ、彼の背後へ静かに並んだ。これまで威張っていた騎手たちは、手綱を握らない自分が選ばれるか初めて不安になった。

ルゼルは鞭をすべて箱へ収め、騎手を竜が選ぶ規則を掲げた。飛びたくない日には飛ばさない。痛みを隠す飾りも禁じる。

灰竜が彼の肩へ鼻先を寄せると、騎竜舎にいた者たちはようやく拍手をやめ、頭を下げた。

《騎竜運用・真正査定》

旧評価 一% → 真値 九十八%

総合貢献順位 首位:ルゼル

役職更新 飼育係 → 騎竜団長

旧ギルド長ドガン → 騎竜舎見習い