グループ名はそのまま

金曜の午後九時十五分、七瀬は冷えた宅配ピザを一切れ、箱から直接取った。

高校時代のグループチャットが騒がしかった。名前は〈二十七歳までに全員集合〉。二十歳の同窓会で、次は二十七歳に会おうと決めてつけたまま、誰も変えていない。

郁海が、役所の前で撮った写真を送っていた。

〈今日、結婚しました〉

七瀬が見るころには、祝福のあとに式の話、名字の話、住む場所の話まで進んでいた。メンバーの一人が〈グループ名、既婚一名とその仲間たちに変える?〉と書き、別の一人が笑う記号を返した。

冗談だと分かっているのに、七瀬はピザを噛むのをやめた。

二十七歳までに全員集合、と言いながら、実際には一度も全員で会えていない。仕事、資格試験、遠距離、親の介護。理由はそれぞれだった。七瀬は予定を合わせやすいほうなのに、いつも日程調整の最後で〈どこでも大丈夫〉と書き、そのまま流れるのを見ていた。

結婚した人から順に、グループの中心へ移っていくような気がする。名字が変わり、家族が増え、報告することができる。七瀬には、今夜届いた電気料金の通知と、明日取りに行くクリーニングくらいしかない。

画面では新しいグループ名の案が増えていた。

〈郁海を祝う会〉

〈残り三人〉

〈次は誰〉

七瀬は入力欄を開いた。何を書いても、僻んでいるように見えそうだった。それでも、昔の名前が消えるのは嫌だった。

〈名前、そのままがいいな〉

送ってから、理由を足した。

〈まだ全員集合してないし〉

少し間が空いた。郁海が最初に〈たしかに〉と返し、続けて〈結婚してもメンバーから抜けないよ〉と書いた。ほかの二人も、次々に賛成の記号を送った。

七瀬は、冷えたピザを電子レンジへ入れた。箱には二切れ残っている。全部食べたら重いと思い、一切れだけ温めた。

グループ名は変わらなかった。七瀬の生活にも、大きな見出しは増えなかった。

それでも、まだ集合していない人たちの中に、自分の席がある。加熱終了の音と同時に、郁海から〈来年こそ四人で会おう〉と届いた。

七瀬は〈うん〉とだけ返した。具体的な日付は明日でいい。今夜は温まった一切れを食べながら、残り三人と数えられなかったことを喜んだ。