コインランドリーの窓
衣替えをした日に限って雨が降り、律花は毛布を抱えてコインランドリーへ行った。
乾燥機はすべて使用中だった。丸い窓の中で色とりどりの洗濯物が回り、店内は柔軟剤と温風の匂いで満ちている。
端の椅子には、作業服姿の男性が座っていた。名札には「脩」とある。二人ともスマートフォンを眺め、乾燥終了の数字が減るのを待った。
外の雨が強くなり、ガラス窓を白く曇らせた。
脩の乾燥機が止まった。扉を開けると、温かな蒸気が出る。中から子どもの小さな靴下や、恐竜柄の寝巻が現れた。
「もう一台、空きましたよ」
律花が毛布を入れようとすると、脩が「こっちは大きいから」と自分の使った機械を譲った。ドラムにはまだ熱が残っている。
料金を入れ、毛布がゆっくり回り始める。見ていると眠くなった。
脩は畳んだ洗濯物を袋へ詰めながら、恐竜の靴下を片方探していた。椅子の下、機械の脇。律花も足元を覗き、最後に毛布のドラムの窓へ貼りついている緑色を見つけた。
停止はできない。靴下は律花の毛布と一緒に、何度も上へ持ち上がっては落ちた。
二人は笑いながら三十分待った。
乾燥が終わると、毛布は抱えるのが気持ちよいほど温かかった。緑の靴下もふっくら乾いている。
外へ出ると雨はまだ冷たい。律花は毛布を大きな袋へ入れ、胸に抱えた。袋越しの熱と、混ざった二軒分の柔軟剤の香りが、家までの暗い道を小さな暖房のようについてきた。
家に帰り、律花は毛布をベッドへ広げた。乾燥機の熱は少しずつ逃げたが、恐竜の靴下と回ったせいか、いつもの柔軟剤とは違う甘い匂いがする。次の週、晴れた日に同じ店の前を通ると、脩が子どもと洗濯物を畳んでいた。恐竜柄の寝巻を着た子が硝子越しに手を振る。律花も応え、家へ戻って毛布を日に当てた。雨の日の温風は、陽射しの奥にも少し残った。
その夜、律花は乾いた毛布へ潜り込んだ。窓の雨音は遠く、布の中だけが昼の乾燥機のように温かい。眠る前、緑の靴下が回る丸い窓をもう一度思い出した。