プロフィールの料理好き

月曜の夜九時、亜弓は炊飯器から冷たいご飯を取り出し、ふりかけをかけた。

夕飯はそれだけだった。味噌汁を作る気力もなく、冷蔵庫にある卵は賞味期限を二日過ぎている。テーブルの端には、昼に買ったサンドイッチのレシートと、空になった栄養ドリンクの瓶が置いてあった。

マッチングアプリのプロフィールには、〈料理が好きです。休日は作り置きをします〉と書いてある。

嘘ではなかった。半年前までは、日曜に鶏肉を焼き、野菜を切り、保存容器を冷蔵庫へ並べていた。友人にプロフィールを見てもらったとき、「料理できるなら絶対書いた方がいい」と言われた。家庭的に見えるし、会話のきっかけにもなるから、と。

実際、届くメッセージの三分の一は料理についてだった。

〈得意料理は何ですか?〉

〈毎日自炊するんですか?〉

〈手料理食べてみたいです笑〉

最後の一文が来るたび、まだ会ってもいない誰かの食卓に立たされる気がした。それでも亜弓は、印象が悪くなるのが怖くてプロフィールを直せなかった。

ふりかけの袋を振ると、ごまだけが最後に落ちた。亜弓はご飯を一口食べ、編集画面を開いた。

〈料理が好きです〉を消す。

空白になった自己紹介欄で、カーソルが点滅した。

〈簡単なものなら作ります。疲れた日はふりかけご飯です。食べることは好きです〉

そこまで書くと、急に生活感が出すぎた気がした。選ばれるための文章として正しいのか分からない。料理をしない人だと思われるかもしれないし、だらしないと思う人もいるだろう。

洗濯機の終了音が鳴った。回したこと自体を忘れていた亜弓は、箸を置いて脱衣所へ行く。濡れた服を一枚ずつ取り出し、しわを伸ばして干した。料理はしなかったが、明日着るものはきれいになった。

戻ってから、書いた文章をそのまま保存した。反応が減るかどうかは、今夜には分からない。

冷たいご飯は半分残った。亜弓はラップをかけ、明日の朝に回す。家庭的に見えない夜にも、暮らしはちゃんと続いている。今日はそれを隠さないプロフィールでよかった。