一手目で割れた魔法陣

チェルカが魔導戦団を追放された翌日、団長ジェルクは演習場へ十二人の魔術師を並べた。

「地味な順番表など要らん。最強の術から撃て」

号令と同時に、炎、雷、氷、風が中央の標的へ殺到した。

標的へ届く前に、魔法陣が割れた。

炎で温められた空気へ氷結術がぶつかり、急激に生じた霧が雷を術者側へ導いた。風術はその雷雲を隊列全体へ広げる。十二本の杖が一斉に弾け、演習場の窓はすべて吹き飛んだ。

誰も敵へ一発も当てていないのに、戦団は半数が火傷、半数が感電した。

「各自が制御すれば済む話だ!」

ジェルクは怒鳴ったが、治療役は首を振った。

「昨日までは、風、氷、炎、雷の順でした」

チェルカは威力でなく、残留魔力が次の術へ何をするかを見ていた。風で空気を整え、氷の霧を薄くし、炎で消し、最後に雷を通す。順番表は、十二人を一つの魔法陣として扱う設計図だった。

爆発で競技用魔晶石まで砕け、戦団は翌週の国家演習から出場停止になった。術者たちは互いの属性を責めたが、一人ずつ試せば全員の魔法は正常だった。強者を十二人集めても、十二の残り火がぶつかれば敵より先に味方を焼く。

焦げた床には、チェルカが以前引いた細い矢印だけが残っていた。皆は立ち位置の飾りだと思っていたが、それは魔力が消える方向だった。彼女は術そのものではなく、術が終わった後の戦場を設計していた。

同じ時刻、チェルカは山村の小さな学舎で、魔法を覚えたばかりの子ども四人を井戸の周りへ立たせていた。

「一人ずつでいい。次の人が安全に使えるように終わらせて」

そよ風、薄氷、温風、微かな雷光。四つの初級術が重なり、井戸を守る透明な防護膜になった。見守っていた学長オベリアは、彼女へ研究室の鍵を渡した。

「強い術者を集めるより、互いを壊さない順番を知る者が必要です」

夕方、戦団の焦げた伝令紙が届いた。明朝の実戦までに戻り、配列を作れ。副団長席を用意する、とある。

チェルカは新しい鍵を握ったまま返書した。

「魔導戦団との指揮契約は、昨日の除名で終了しています」