不死王の死を墓へ戻す
墓守エルドは、反乱者たちと一緒に処刑台へ上げられた。
七十年、王家の墓を掃き、骨壺の名を覚え、夜ごと亡者を鎮めてきた。だが不死王は墓守を「死者の召使い」と呼び、最後には墓地を潰して自分の宮殿を建てた。
エルドの技能は、盗掘品を片づける程度のものだった。
【職業技能《副葬返還》:死者から切り離された遺品一つを、その死者の墓へ戻す。】
不死王は処刑を見物するため、胸元に黒い宝石を飾っていた。
千年前、彼は人間として一度死んだ。復活の儀式で自分の“死んだ瞬間”だけを肉体から抜き取り、宝石へ封じた。それ以来、首を落としても燃やしても、死という結末が体へ届かない。
勇者たちは宝石を何度も砕こうとしたが、傷一つつかなかった。
王はエルドへ刃を向けた。
「墓守よ。最後に余の永遠を拝んで死ね」
エルドは宝石ではなく、その奥に沈む灰色の光を見た。
所有者は、目の前の不死王ではない。
千年前に死んだ、一人の男だ。
死の瞬間は、彼がこの世へ残した最後の遺品だった。
そして王宮の玉座は、潰された王墓の真上に置かれている。墓は消えていない。ただ床の下へ隠されただけだ。
エルドは処刑台から手を伸ばした。
「お返しします。あなたが墓へ置き忘れたものを」
黒い宝石を砕く必要はなかった。中の灰色だけが抜け出し、床石を透り抜けて地下の棺へ落ちる。
千年前の死が、ようやく正しい場所へ戻った。
不死王の顔に最初の皺が刻まれた。次の瞬間には髪が白くなり、鎧の中で骨が崩れる。永遠に先延ばしされていた千年分の死が、一度に追いついた。
王冠が処刑台へ転がる。
反乱者たちを縛っていた鎖が、主を失って外れた。
エルドは王冠を拾わず、地下の墓へ一礼した。
地下から、長く塞がれていた墓の扉が開く音がした。宮殿を飾っていた金銀は本来の副葬品へ戻り、壁に塗り込められた名札が床へ並ぶ。反乱者たちは王冠ではなく、その名札を拾った。エルドは一枚ずつ土を払い、忘れられていた死者の名を読み上げた。
【職業《墓守》が上位職《終焉返葬官》へ書き換わりました。】