二本の人差し指

鷹峰綴は、両手の人差し指を三枝梧へ突きつけた。

三枝は一瞬笑い、それから壁の規則を見直した。

《合図で誰か一人を指させ。最も多くの指に示された者を処刑する》

三枝と小門稔は、打ち合わせどおり綴を指している。二本。

合図の直前、三枝はわざと右手だけを机に出し、「指さし投票だ。一人一本、常識だろ」と念を押した。司会者は肯定も否定もしなかった。その沈黙を、三枝は承認だと取り違えた。

奥平響は迷った末、三枝を指した。一本。

そして綴の左右の人差し指が、どちらも三枝を示していた。

「一人一票だ!」三枝が怒鳴る。

「票とは書いてない。数えるのは人でも腕でもなく、指だ」

終了音と同時に、天井のカメラが白い線を描いた。

鷹峰綴を示す指、二本。

三枝梧を示す指、三本。

三枝の首輪が赤く変わる。

開始前、三枝は小門へ囁いていた。「奥平は土壇場で俺に来る。二対二なら、主催者が綴を選ぶよう話はついている」

綴は鏡張りの壁越しに、その口の動きを読んでいた。だから奥平へ何も頼まなかった。ただ、彼が三枝を憎む理由を知っていた。

「でも規則は『一本の指で』とも『片手だけで』とも言っていない」

綴は両腕を下ろす。

小門が慌てて二本目の指を三枝へ向けたが、判定後だった。参加者は全員、学校で教わった多数決を頭に置いていた。一人につき一票。手を挙げるなら一本。そんな前提が、機械の文章より強かった。

綴は開始前、両手の指を一本ずつカメラの前へ出してみた。照準枠は二つ現れた。機械が数えているのは投票者の識別番号ではなく、指先の輪郭だった。

三枝は首輪を掴む。「こんなのは言葉遊びだ」

「あなたは二人で私を殺す相談をしていた。数の力を信じたんでしょう」

綴は解除された手枷を床へ落とした。

「なら、最後まで正確に数えるべきだった。あなたを指したのは二人。でも、あなたを示した指は三本」

処刑灯が点る直前、奥平が綴を見る目を変えた。

恐怖ではない。初めて、自分の一本にも意味があったと知った顔だった。