五人目は敵でした

 黒竜の尾が冬弥を打ち、四人全員の体力が同時に四分の一ずつ減った。

 誰も驚かない。このゲームでは、パーティが受けたダメージは人数で均等に分けられる。

【共有痛覚 有効】

【パーティ人数 4/5】

 共有される痛みは、仲間を見捨てないための仕様だと説明されていた。だが上位攻略者は逆に利用した。人数を減らせば報酬の取り分が増えるため、弱い者を事前に追放し、四人以下で挑む。冬弥たちも五人目を空けたまま、誰が最も多く報酬を取るかばかり相談してきた。

「次で全滅だ!」

 剣士が叫ぶ。黒竜の体力も残りわずかだが、最後の咆哮は四人の合計体力を上回る。

 冬弥はパーティ欄の空白を見た。五人目の枠。攻略開始から、誰も補充しなかった。仲間を増やせば一人分の負担は減るが、報酬も減るからだ。

 彼は黒竜を選択し、招待ボタンを押した。

「何をしてる!」

【対象《黒竜ヴァルク》へパーティ招待を送信しました】

 当然、拒否されると思った。ところが黒竜は攻撃を止め、金色の目を細めた。首に刺さった古い首輪へ、冬弥たちと同じ初心者マークが刻まれている。討伐記録には、黒竜が町を襲ったとは一行もない。毎回、プレイヤーが巣へ押しかけ、怒らせていただけだった。

『我を、敵以外として選ぶのか』

「五人目が空いてる」

 数秒の沈黙の後、竜の名がパーティ欄へ加わった。

 剣士が反射的に斬りかかる。黒竜へ入った傷は五等分され、冬弥たちだけでなく、黒竜自身にも分配された。

「攻撃したら俺たちも死ぬぞ!」

 全員が武器を止める。黒竜も、咆哮を飲み込んだ。

 戦場に不自然な静けさが落ちた。敵味方が同じ赤い体力線を分け合っている。誰か一人を倒すには、全員を倒さなければならない。

 冬弥は剣を地面へ置いた。

「じゃあ、誰も倒さなければいい」

 黒竜の首輪が割れた。

【メインクエスト《黒竜討伐》失敗】

【隠しクエスト《五人目の仲間》達成】

【黒竜の敵対属性を解除しました】

【世界滅亡イベントは、実行者を失ったため中止されます】