六を九にする指

宵崎怜は、自分の扉に掛かった「6」の円盤を半回転させた。

一本の中心ねじで留められた札は、音もなく逆さになる。向かいの柴垣尊が立つ扉は「8」。残り三秒、怜の前で数字は「9」を示していた。

「札を回すな!」

尊が怒鳴る。

「回すなとは書いてない」

規則は、二人の間の床に投影されている。

――終了時、より大きい番号を示す扉の前に立つ者を勝者とする。

開始時点では六と八。尊は八を取った瞬間に勝ったと思い、怜が交換を頼んでも聞かなかった。怜は扉の材質や鍵ではなく、数字の描き方を見ていた。六の札には上下を示す線がない。吊り下げ穴も中央に一つ。九として読んでも形は変わらない。

主催者は、弱い番号を押しつけられた者が相手を襲う姿を望んだのだろう。だから二人を鎖で隔て、ぎりぎり手が届かない距離に置いた。だが相手を動かせなくても、自分の数字は動かせた。

尊は自分の八を横倒しにしようとする。しかし八はどう回しても八だ。札を外そうとしても、二本のねじで固定されている。六だけが一軸で回るのは、舞台係が六と九を同じ部品で使い回すためだった。

尊は規則文の「番号」を指さし、九は別の番号だから無効だと訴えた。しかし開始前の一覧には、六番札と九番札が同じ部品番号で登録されていた。円盤の裏に小さく〈6/9共用〉と刻まれている。運営自身が、向きによって二つの番号になると認めていた。

ゼロ。

天井の読み取り機が怜の扉へ光を当てる。

〈扉番号九。比較対象八。勝者、宵崎怜〉

尊の顔から血の気が引いた。

「最初は六だった!」

「判定するのは終了時だ」

怜が指を離しても、札は九の位置で止まった。首輪が開き、床へ落ちる。

スピーカーの向こうで、司会者が小さく舌打ちした。怜はそれを聞き逃さない。

「数字に上下があると思ったのは、あなたたちも同じだったんだね」

九番になった扉が開き、尊の八番だけが赤い壁へ変わった。