六体目を数えた夜

杜若修司は友人と二人で怪談配信をしていた。再生数が伸びず、最後の企画として「地図にない禁足地・地蔵坂」を選んだ。事前に拾った地域掲示板のログには、削除された投稿の引用が残っていた。

《地蔵は五体まで数えてよい。六体目を口に出してはいけない》

相方は「六体あるって先に言ってるじゃん」と笑った。坂の入口には五枚の前掛けが干され、どれも内側にスマートフォンの機種名が墨書されていた。最新機種だけがなく、修司の端末と同じ色の紐が一本余っていた。

配信音声書き起こし

23:08 修司「一体目。首がない」

23:11 相方「二体目、三体目」

23:16 修司「四、五。ここで終わり?」

23:17 無音十一秒

23:17 修司「……六体目」

修司がその数を口にしたのは一度だけだった。

六体目の地蔵は、相方のすぐ後ろに立っていた。石ではなく、泥で固めた人の形だった。顔の位置にスマートフォンが埋まり、二人の配信画面を映している。視聴者数は「6」。六人の視聴者名は、修司がこれまで配信で読んだ怪談の行方不明者と一致していた。相方の端末では視聴者は五人で、六人目の欄だけに修司の本名が表示されている。コメント欄には同じ文が流れた。

《数えてくれてありがとう》

配信はそこで切れた。二人は別々の道から麓へ戻ったが、相方は「六体目なんて見ていない」と言った。録音にも修司の声はなく、23時17分には知らない男が低く「修司」と呼んでいた。

動画を非公開にしても、視聴者数は毎晩一人ずつ増えた。七日目、修司の連絡先に《六体目》というアカウントが自動追加された。

プロフィール写真は、修司の部屋の玄関だった。

六体目:いま五人で聞いています

修司:誰だ

六体目:あなたが数えた人たちです

ブロックすると、大学時代のグループチャットへ参加通知が出た。退会した者、死んだ者を含め、メンバー数が六人になっていた。

六体目が写真を送った。

暗い部屋で、修司がベッドに座っている。撮影位置はクローゼットの中だった。写真の端に泥の指が五本かかっている。

次の通知は、端末の読み上げ機能が勝手に声にした。

「六体目さんが、杜若修司さんを数えました」

グループの人数表示が、五人に減った。