割れた印環

火神殿の客間で、シャープール・ミフルは赤い封蝋を掌へ垂らした。

向かいのカヴェ・ロスタムは、右手に半分の印環を嵌めている。二人が仕えた太守は三年前に毒殺され、獅子の印環もその夜に割れた。今夜、太守の娘は本物の半環を持つ者だけを雇うという。彼女が集めた兵はまだ三十。城門を奪うには、父の名で旧臣を呼び戻す必要がある。その印が偽物なら、挙兵は夜明け前に終わる。二人の決闘は腕比べであると同時に、軍勢の名札を決める裁きだった。

だが半分だけでは、紋の向きが分からない。カヴェは自分こそ遺命を託されたと主張し、シャープールを偽者と呼んだ。

「言葉では終わらぬ」

娘は短く言い、二人へ剣を取らせた。

火皿を囲む狭い部屋だった。壁には太守が使った革鞭と、毒殺の日に割れた杯が掛かっている。シャープールは杯を運んだ。カヴェは扉を守った。どちらにも、王を殺せる一刻があった。娘はその夜まだ十三歳で、二人の背中しか覚えていない。一人は杯のそばに立ち、一人は閉じた扉の前にいた。騎兵剣は長すぎる。互いに二度、柱へ刃を当てた。

カヴェは右手を決して開かなかった。剣を左で操り、印環を守っている。シャープールはそこへ故意に斬り込んだ。カヴェは待っていたように拳を突き出し、環の硬い縁で刃を受けた。

その瞬間、シャープールの掌の封蝋が、カヴェの印面へ押しつけられた。

二人は離れた。

シャープールは赤い蝋を火の前へかざした。獅子は右を向いている。

本物の印面は鏡に彫る。押された獅子は左を向くはずだった。カヴェの環は、見た目だけを写した偽物だ。

カヴェの顔から、遺臣の仮面が落ちた。今度は左手の剣ではなく、右袖から細い毒針が出た。

シャープールは予想していた。封蝋を押した手をそのまま返し、カヴェの手首を掴む。騎兵剣の柄で顎を打ち、床へ伏せた。毒針が火皿へ落ち、青い煙を上げた。

「おまえが太守へ使った針か」

娘が聞いた。

カヴェは答えなかった。

シャープールは割れた偽環を踏み砕いた。本物を持つ者ほど、印を見せびらかさない。

娘が神殿兵へ命じると、復讐軍の獅子旗が中庭に上がった。