同じ折り目

久世壮介は、県庁の文書保管室で働き始めたばかりだった。入札書は開札後、ホチキスを外し、番号順に薄い箱へ納める。地味だが、紙を傷めない指先が必要だった。

河川清掃業務の入札書は三枚とも、同じ位置で三つ折りにされていた。上端から九十九ミリ、次が百一ミリ。さらに左下に、同じ二穴パンチのずれがある。壮介は、三社が同じ事務用品を使ったのだろうと思った。

だが、一番下の入札書を斜めから見たとき、紙の表面に浅い溝が走っているのに気づいた。鉛筆でこすれば文字が浮く類の筆圧痕だ。保管文書を汚すことはできない。壮介は資料修復用の斜光灯を当てた。

逆向きの数字が現れた。二千七百四十四万円。落札した会社の金額だった。

その痕は、二番目の会社の入札書にも、その下の三番目にも残っていた。三社の用紙は、重ねたまま上から順に金額を書かれている。別々の会社で作成されたなら、あり得ない。

契約課へ報告すると、係長は紙の癖だと言った。

「似た数字に見えるだけだ。箱へ戻せ」

落札決裁の日、壮介は文書管理担当として原本を会議室へ運んだ。委員長が契約書を開き、係長が印鑑を渡す。壮介は部屋の照明を落としてよいか尋ねた。ざわめきの中、斜光灯を紙の横へ置く。

白い紙の凹凸に、逆さの『27,440,000』が浮かんだ。二枚目にも、三枚目にも。委員長は用紙を一枚ずつ離し、折り目を重ねた。三本の線は寸分違わず一致した。

壮介はさらに、筆圧痕の重なり方から用紙の順番を説明した。落札会社の紙が一番上、二位の会社がその下、三位が一番下。上から書いた数字ほど、下の紙へ薄く残っている。各社が提出した順番まで、圧痕の強弱と一致した。係長は紙を入れ替えた可能性を口にしたが、受付印の位置も、折り目の内外も、その順番を裏付けていた。

係長が照明を戻せと命じたが、委員長は答えなかった。決裁印の赤だけが暗がりに見え、その手は契約書の上で止まっていた。