夜だけ閉じる柵

森際のレク村では、夜になると小鬼が畑を抜け、共同倉から麦袋を一つずつ盗んだ。人を襲うほどではない。だが毎晩一袋、冬まで続けば村は飢える。

若い城代トゥーラは、昼も閉ざす石壁ではなく、夕暮れにだけ閉める木柵を提案した。

「市場の日も旅人の道も塞ぎません。日没の鐘から朝の鐘まで、倉と家並みの間だけ守ります」

費用は毎週の市で場所を使う露店一軒につき銅貨一枚、ただし売上が銅貨十枚未満の日は免除。村人の通行税も、門税も取らない。徴収は柵が完成した時点で終了し、余った木材は全員立会いで薪として配る。夜番は二人一組、一世帯につき月一回まで。出られない家は代役を雇ってよいが、料金の上限も板に書いた。

古参兵が言った。

「命令すれば、明日には全員を森へ出せるぞ」

「命令で造った柵は、命令が消えた日に腐ります」

最初に木を運んだのは、麦を盗まれていないパン屋スーニャだった。

「倉の麦が尽きれば、うちの窯も冷えるからね」

露天商は自分たちの銅貨が何本の杭になったかを数え、農家は枝を払い、旅芸人まで二日だけ縄結びを手伝った。誰も村へ住みつく義務はない。それでも、開いた昼の門を残す柵なら守る価値があると思った。

柵には一か所、外からでも鳴らせる旅人用の鐘を付けた。遅れて来た者を締め出さないためだ。開門する際は夜番二人の署名が必要で、片方だけの判断では開かない。閉じる安全と入れる安心を同じ規則にした。古参兵は面倒だと笑ったが、試験の夜、自分が外役になって鐘を鳴らし、決めた手順で門が開くと、誰より丁寧に蝶番へ油を差した。

初めて門を閉じた夜、小鬼の赤い目が柵の外に並んだ。隙間を探して走り回ったが、倉へ続く穴はない。やがて森の奥へ消えた。

内側では、夜番の二人へスーニャが焼きたての丸パンを差し入れた。トゥーラは門柱へ砂時計を掛ける。

札には、閉門と開門の時刻だけが大きく書かれていた。

朝の鐘が鳴る。柵は約束どおり開き、最初の旅人が湯気の立つパンを買いに入ってきた。