天井裏の四人目
神楽は、参加者二人ではなく、天井のスピーカーを指さした。
「排出するのは、あんただ」
垣内と藤代が息をのむ。密閉室には三人しか見えない。中央表示は《現在の酸素量 三人なら三十分》。その下の規則が点滅していた。
《五分以内に、この区画にいる一人を排出せよ。残った者全員が三十分生存可能になれば勝利》
床には三人分の投票ボタンがあり、主催者は参加者同士で一人を選ばせるつもりだった。垣内は藤代を、藤代は垣内を指して怒鳴り合う。
神楽だけは開始直後から、スピーカーの音に混じる微かな咳を聞いていた。さらに天井の換気格子から、煙草と薄荷の匂いが交互に流れてくる。無人の録音ではない。壁の向こうに監視員がいて、同じ空調系統の空気を吸っている。
神楽は投票台の側面を蹴り、非常用の保守パネルを開いた。中には四つの座席番号がある。A、B、C、そして《CONTROL》。各番号の隣に排出ボタンが並んでいた。
「参加者から選べとは書いてない」
彼女はCONTROLを押した。
天井裏で警報が鳴る。スピーカーの声が初めて取り乱した。
「その操作は無効だ!」
「だったら、ここを『同一区画』に含めるな」
鈍い走行音とともに、壁裏の監視席がレールで後退し、外部エアロックへ送られる。表示が一度《四名》を示し、次に《三名・生存可能時間三十一分》へ変わった。
垣内と藤代が、ようやく隠されていた人数を理解する。
《条件達成。参加者三名を勝者とする》
出口が三つとも開いた。
主催者は「一人を犠牲にできるか」を見たかったのだろう。だが規則が要求したのは、参加者を減らすことではなく、この区画で酸素を消費する一人を排出することだった。
神楽は空になったスピーカーへ笑いかける。
保守パネルの人数センサーには、開始直後から四つの緑点が灯っていた。三つは床の参加者席、残る一つだけが天井方向。神楽はそれを故障ではなく、規則が使う《この区画》の範囲を示す証拠と見た。隠された四人目は、最初から機械だけには隠れていなかった。
「観察者は、数に入らないと思い込む。そこが穴だよ」