影を数える灯手
アウラドの灯りは、いつも暗すぎると文句を言われた。
彼は松明を高く掲げず、床へ近づけ、壁から離して持つ。光そのものではなく、光が作る影を見ていた。
敵を倒さない灯手の貢献は1%。隊長ヤルドは暗い回廊で成果板を叩いた。
「怖がって灯りを絞る者など置いていけ」
アウラドは灯油を渡し、隊列から外れた。ヤルドは勝ち誇り、松明を強く燃やした。
遺跡が昼のように明るくなる。
すると壁の影が、光から離れて歩き始めた。
仲間の足元から黒い腕が伸び、魔術師の喉を掴む。剣で切っても影は薄く散り、別の壁から戻ってくる。松明を増やすほど影も増えた。
入口へ戻っていたアウラドは、壁を這う黒さを見て足を止めた。誰も助けを求めていない。だが彼は灯りを消しながら走った。
闇が満ちると、黒い腕は消えた。ヤルドが何も見えないと叫ぶ中、アウラドは小さな灯火だけを床へ置く。
影が片側へ集まった。
「本体は影の中じゃない。影が避けている場所です」
光の輪の中央には、何も影を落とさない透明な虫がいた。剣士がそこへ刃を入れると、壁の黒さが崩れ落ちた。
闇へ慣れた仲間の目には、回廊の奥に隠れていた出口まで見えた。明るさを奪われたのではない。余計な光から解放されたのだ。これまでアウラドが灯りを低くした夜も、同じように敵の輪郭だけを浮かばせていた。誰も彼の手元を暗いとは言わなくなった。むしろ、その小さな光がどこを隠し、どこを示すのか、息を潜めて待った。
ヤルドは明るくした自分が敵を見つけたと言い張った。アウラドは煤で汚れた指を見せる。
「見えることと、見ていることは違います」
照明腕輪が過去の影の動きと、灯りの角度を重ねた。奇襲が起きなかった夜、幻覚が薄れた洞窟、敵が遠ざかった通路。すべてアウラドの光量調整によるものだった。
隊長用の大型灯が消え、小さな灯火だけが新しい権限を照らした。
《暗域貢献・真正算定》
申告値:1% → 真値:98%
働き順位:首位 アウラド
役割更新:灯手 → 暗域監督
旧隊長ヤルド:光量操作禁止