映える親友
乃亜は写真にこだわりすぎる。
カフェへ行けば、料理が冷めても角度を変え、私の顔を何十枚も撮る。投稿前に必ず確認させてと言い、気に入らない写真には赤い印をつける。自然な一枚のほうが親しみやすいのに、彼女は自分だけ完璧でいたいらしい。
だから私は、赤い印の写真を時々あえて使った。
目を閉じていたり、口元にクリームがついていたりするほうが、普段の乃亜が伝わる。フォロワーも「飾らない友情っていい」と喜んだ。私がきれいに写っているのは偶然だ。投稿は私のアカウントなのだから、選ぶ権利も私にある。
撮影のとき、乃亜は必ず私の立ち位置へ小さな白い紙を置いた。そこだけ照明が強く当たると言う。もう一つ、私の端末で撮ったあと、彼女はレンズを布で二度拭いた。自分を撮る前に汚れを落とすなんて、やはり計算高い。
私たちは「美女とおもしろ担当」の親友コンビとして企業案件を受けるようになった。もちろん美女は私だ。乃亜はコメント欄で容姿を笑われても、「美都が楽しそうならいい」と言った。妬みを表に出さないところだけは偉いと思う。
ある日、化粧品ブランドから契約終了の連絡が届いた。理由は、同伴者への継続的な侮辱表現。私は乃亜が告げ口したのだと責めた。
彼女はクラウドアルバムを開いた。
同じ日、同じ場所、同じ服。私の端末で撮られた元写真では、乃亜の顔だけが不自然に横へ伸ばされ、歯には黄色い色が足されていた。編集履歴には私のアカウント名が残っていた。
私は笑った。少しくらい加工しなければ、キャラクターの差が出ない。乃亜だって仕事の恩恵を受けていた。
「白い紙は、色補正の基準。レンズを拭いたのは、指紋を残すため」
彼女はそう言い、ブランド担当者とのビデオ通話を切った。机の上の白い紙には、毎回の撮影日と私の編集時刻が記録されていた。
その夜、私のアカウントから謝罪文が投稿された。パスワードは変えていないのに、下書きとは一字違っていた。
〈親友を引き立て役として扱ったことを認めます〉
添えられた無加工写真で、笑われる役は最初から一人しかいなかった。