森を分けない枝の家
人間の村と森人の集落の境には、戦で親を失った子どもが七人いた。人間側は「耳の長い子は森へ」、森人側は「鉄の名を持つ子は村へ」と押し返し、七人は境界樹の根元で暮らしていた。
新しい境界管理官ラウレンは、その樹上に共同住宅を造る案を出した。
「どちらの土地だ」
双方が同時に問う。
「どちらにも属する。費用は伐った木一本につき苗木二本と、売却益の百分の一。人間も森人も同率。苗木は森の回復に、金は樹上住宅の維持に使う。伐採しない者からは取らない。帳簿は二つの言語で同じ板へ書く」
さらに部屋割りの規則も公開した。種族ではなく、年齢、眠る時間、音への敏感さで決める。年長だから広い部屋、力が強いから窓側、という優先も設けない。
最初に協力したのは、人間の木こりと森人の樹医だった。二人は長年口も利かなかったが、枝を傷めず梁を渡すには互いの技術が必要だった。鍛冶屋は樹を締めつけない金具を作り、織り手は風を通す幕を持ち寄った。
孤児のシェムは会議で、小さく手を挙げた。
「根元の梯子を二本にして。喧嘩した日に、同じ入口だと帰れないから」
大人たちは一瞬黙り、すぐ設計図へ二本目を足した。仲良くしろと強いる家ではなく、喧嘩しても戻れる家にした。
建築の最後に、どちらの祭日を休みにするかで再び揉めた。シェムは壁の暦へ両方を印し、家の当番だけ交代すればよいと提案した。すると子どもたちは、自分たちだけの「家ができた日」も休みに加えた。大人たちは反対せず、三色目の印を描いた。枝先の小さな見張り台も、子どもだけが使える読書台へ変えられ、鍵も七本作られた。
完成の日、七人はそれぞれ違う梯子を上った。部屋の扉には種族名でなく、本人が選んだ色の葉が掛けられた。
夕暮れ、境界樹の高い枝に二つの旗が揚がった。人間の赤と森人の緑。だが中央には、子どもたちが縫った白い布が一枚あった。
そこには、両方の文字で同じ言葉が書かれていた。
――ここから先は、家の中。