正解者なし
【早押しクイズ研究会・臨時】
21:02 芦原鐘
大学から処分通知。大会の問題流出について、関与を否定する証拠が足りない。半年活動停止。
21:03 御厨絹佳
半年後、全員卒業。
21:04 醍醐律
つまり解散、が正解?
誰も早押しスタンプを押さなかった。
流出した問題は、三人とも見ていない。それでも決勝で全問正解した鐘の成績が疑われた。練習記録を出しても、「偶然にしては出来すぎている」と返された。正解したことが、最も強い疑いになった。
21:07 鐘
責任は僕が取る。代表だから。
21:08 絹佳
代表になったの、決勝の二日前。
21:08 律
責任者って、問題文の最後に急に出てくる選択肢みたいだな。
絹佳は春から高校の国語教師になる。生徒には、設問の意図を疑えと教えるつもりだと言った。
21:13 絹佳
でも採用先には処分を話す。後から知られる方が嫌。
律はテレビ局のクイズ番組制作会社へ入る。問題を答える側から、作る側へ行く。
21:15 律
二度と漏れない問題を作る。
21:16 鐘
それ、面白くない問題になるかも。
21:16 律
じゃあ、漏れても答えが変わる問題にする。
鐘は大学院で数学を続ける。証明なら、正解が疑われても手順を見せられるからだ。
21:20 絹佳
三人とも、疑われたせいで進路を決めたみたい。
21:21 鐘
逆。進路が決まってたから、疑われても残った。
その言葉だけ、二人の既読が遅れた。
解散手続きのため、律が投票機能を作った。
〈研究会の名称と記録を削除する〉
A 賛成
B 反対
C 保留
鐘はB、絹佳はC、律はAを選んだ。三択が一票ずつ並び、締切になった。
21:29 律
多数決、成立せず。
21:30 絹佳
こういう時の正解は?
21:31 鐘
問題不備。
三人は同時に笑うスタンプを送った。直後、大学の管理者権限でグループが閉鎖され、画面は更新できなくなった。
最後の投票だけが残った。正解者なし。けれど三人は、それぞれ違う答えを持って、同じ問題から退出していった。