玄関写真の左端
通販会社の問い合わせ窓口で、津守蒼士は誕生日プレゼントが届かないという電話を受けた。
画面上では配達済み。追跡番号にも、午後七時十二分の配達完了スキャンが残っている。客は玄関も宅配箱も探し、家族にも確認したという。
「写真の家は、うちに似ています。でも、うちじゃありません」
蒼士は証明写真を拡大した。灰色の扉、同じ形の照明、同じ番号の宅配箱。新築分譲地では外観がそっくりな家が並ぶ。住所の入力ミスを疑ったが、伝票は正しい。
写真の左端に、赤い消火器箱が半分だけ写っていた。箱には白字で「B街区3」とある。客の住所はA街区3。道路を挟んだ向かい側だった。
蒼士は再送の手続きを始めず、誤着として営業所へ連絡した。すぐに代品を送れば早いように見えるが、元の荷物には子どもの名前を刺繍した一点物が入っている。回収せずに処理すれば、個人名の入った品が他人宅に残る。
配達員はまだ近くを走っていた。写真と消火器箱の番号を伝えると、十分後には荷物を回収できた。向かいの家は留守で、雨の吹き込む軒下に置かれていたという。
営業所の地図では、A街区とB街区が同じ番地として重なって表示されていた。蒼士は配達員個人の不注意だけにせず、街区名が端末に大きく出るよう修正依頼を付けた。人が気をつければ済む、と片づければ、似た玄関が並ぶたび同じ荷物が迷う。写真の端は、仕組みの欠けた場所も写していた。
客は電話口で笑った。
「そんな端っこ、よく見ましたね」
「玄関が同じなら、玄関以外を見ます」
再配達はその夜のうちに終わった。子どもが箱を開ける歓声が、受話器の遠くから聞こえた。
蒼士は写真の判別点を記録し、同じ分譲地では街区表示まで確認するよう営業所へ共有した。
再配達の完了時刻まで追跡番号へ追記して、ようやく一件を閉じた。雨も止んでいた。
次の通話が入る。今度も配達済みで、写真には白い扉が写っている。
蒼士は扉ではなく、その端にあるものから探し始めた。