砕けた剣を欲しがる三人
鍛冶師カナドが打った剣は、御前試合の一撃目で砕けた。
刃の破片が王の足元まで飛び、工房組合は即日、彼の炉を封じた。材料に不純物が混ぜられていた証拠は見つからず、「腕が鈍った」とだけ記録された。
炉の火を落とす夜、三人の客が訪れた。
近衛騎士エルシェは愛剣を腰から外し、封じられた金床へ置いた。
「次はこれを打ち直して。私の命を預けられるのはあなただけ」
鉱山監督ハルヴァは、工房の隣にある空き倉庫の鍵を差し出した。
「組合の炉が使えないなら、山に炉を作る。職人頭の部屋も空けてある」
剣舞師サヤンは、夜明け発の巡業馬車を門前に待たせた。
「武器がなくても舞える。でも、あなたの刃で舞いたい。返事が出るまで車輪は回さない」
三人とも、砕けた剣を失敗作とは呼ばなかった。
エルシェは破片で指を切らぬよう一本ずつ布に並べ、ハルヴァは炉の煤を気にせず膝をつき、サヤンは欠けた刃にも舞台用の赤紐を結んだ。壊れたものへの扱いが、そのままカナドへの答えに見えた。
カナドは最後の証明をしたくて、残った鋼で短剣を打った。火花、槌音、冷却。だが焼き入れの瞬間、刃に一本の亀裂が走る。
また砕ける。
彼は槌を落とした。
「もう駄目だ。誘いは取り消してくれ。次は君たちの武器を壊す」
エルシェが愛剣を取り上げたので、カナドは胸の奥が冷えた。やはり任せられないと悟ったのだ。
しかし彼女は愛剣で工房の封印札を切った。
ハルヴァは亀裂の入った短剣を光にかざし、サヤンは床の鋼片を拾い集める。誰も出口へ向かわない。
「見ろ。不純物が同じ位置に浮いている」とハルヴァ。
「今夜の材料にも細工された証拠ね」とエルシェ。
サヤンは鋼片を布で包み、胸元へしまった。
「失敗作じゃない。あなたを陥れた証人でしょう」
三人は炉の前に立ち、組合が来ても火を消させないと告げた。
愛剣は再び金床へ置かれ、山の鍵はカナドの腰へ結ばれ、巡業馬車の御者は朝食まで作り始めた。
どこで炉を開くか、彼はまだ決めない。
ただ消えたはずの火の周りを三人が守り、砕けても帰れる工房だけは、もう封じさせなかった。