空腹を数えない昼鐘

北畑村では、冬になると午後の教室から子どもが消えた。

教師は集中力がないと叱ったが、理由は簡単だった。朝食を抜いた子は、昼鐘まで座っていられない。家へ帰れば薄い芋粥があるかもしれず、学校に残れば何もない。成績の悪い子ほど欠席が増え、さらに罰を受けた。

代官ベルナは、学校の成績表より先に共同鍋を持ち込んだ。

「昼食は褒美ではありません。授業を受けるための燃料です。点数にも、家の働きにも結びつけない」

村の穀物税を改め、種籾と各家の冬越し分を先に除き、それを超えた収穫の三十分の一だけを納める。倉へ入った麦、豆、根菜の重さを毎朝量り、献立と残量を校庭の板へ書く。領主農園の作物も同じ秤に載せた。

「不作の家まで出せと言われるのでは」と農民たちは疑った。

ベルナは赤い線を秤台へ刻んだ。

「この線より下の家からは、一粒も取りません」

翌日、線を越えた農家が最初の豆袋を置いた。形が悪く市場に出せない蕪を別の家が運び、陶工は欠けのない椀を二十個焼いた。猟師は脂身を、香草婆は乾燥葉を持参した。誰も命じられていないのに、献立板の空欄が次々埋まった。

献立板には食べた子の名前を書かなかった。誰の家が苦しいかを晒さず、全員が同じ列に並ぶためだ。裕福な粉屋の娘も、今年畑を失った子も、同じ木札を一枚ずつ受け取った。余った分は持ち帰りではなく翌日の鍋へ回すと、子どもたち自身が残量を数えた。

初めての昼、鍋から白い湯気が上がった。いつも途中で帰る少年ネロは、椀を両手で抱えたまま教師を見た。

「これを食べたら、午後もいていいの?」

「食べなくてもいていい。食べれば、もっと楽にいられる」

鍋番の農夫は、自分が納めた豆を探そうとはしなかった。煮えた時点で誰の豆でもなく、明日学ぶ全員の昼食になっていた。

ネロは大きく一口すすった。隣の子がパンを半分ちぎる。食後、午後の出席欄には初めて全員の丸が並んだ。

教師が昼鐘を鳴らすと、帰り支度の音ではなく、二十個の匙が椀へ触れる音が教室に満ちた。