第八支柱の解体命令

銀灰鉱山の坑道で、第八支柱の警告石が赤く点滅していた。

測量士バシュト・レイムが退避を命じようとすると、鉱山主クェルド・サヴァ男爵が行く手を塞いだ。

「作業を止めるな。支柱の裏に大銀脈がある」

「亀裂が天井まで達しています。第八支柱を動かせば崩落します」

「鉱夫は替えが利く。銀脈は逃げる」

男爵は作業長へ、支柱を半分切り落とすよう命じた。拒んだ鉱夫の家族から配給を止めるとも言う。横暴は暗い坑道で、誰の目にも明らかだった。

バシュトは安全変更票を出した。

「支柱を外すなら、領主の正式命令が必要です。事故時の責任者もご記入ください」

クェルドは舌打ちし、〈第八支柱を即時解体。警告石を布で覆い、採掘を続行。全責任は測量士の過剰判断にある〉と書いた。

「責任はおまえにしておく。生き残ったら牢へ入れ」

そう言って署名し、男爵印を押した直後、警告石の赤が白へ変わった。

「なぜ色が――」

「命令票が受理されたからです」

鉱山の安全票は、重大変更が署名されると王立鉱務局へ即時転送される。署名者が責任を他人へ押しつけても、筆圧、声、魔力印は別欄に保存される。クェルドは書式を読まず、バシュトの名を書けば逃げられると思っていた。

坑口側から退避鐘が鳴り、青い防壁が支柱を包んだ。鉱務局が遠隔で非常封鎖を発動したのだ。鉱夫たちは一人ずつ安全路へ走る。

ほどなく監察官が坑道へ入り、白く光る変更票を掲げた。

「私は解体など命じていない。この男が勝手に書いた!」

監察官が票へ触れると、クェルドの声が再生された。〈鉱夫は替えが利く〉。坑道の壁に何度も反響し、作業長たちの顔から恐れが消えていく。

バシュトは警告石を覆うため用意されていた黒布を、男爵の足元へ置いた。布の端にも、支給を承認した男爵家の紋が刺繍されている。

監察官は封印鎖を取り出した。

「クェルド・サヴァ。安全設備破壊命令、労働者への強要および重大災害未遂の容疑により、王立鉱務局は貴殿の拘束を命じる」