緑の湯の一滴

鋳物町の職人は、腕に赤い斑点が出ても働き続けた。

炉灰と金属粉が皮膚に残り、掻いた傷から熱を持つ。薬師でもある代官カシュは、治療薬を配るより先に、仕事帰りの汚れを落とせる浴場が必要だと判断した。

費用を職人一人ずつから取る案に、彼は朱線を引いた。

「粉を出すのは炉です。負担は人ではなく、稼働した炉にかけます」

一炉一日につき銅貨一枚。ただし休炉日はゼロ。小さな炉も大きな炉も同額では不公平なので、炉口の幅を三段階に分け、一枚、二枚、四枚とした。寸法は役人の目測ではなく、誰でも使える木枠で測る。集めた金は湯沸かし、濾過布、薬草だけに使い、残れば翌月の税を下げる。

大工場主が怒鳴った。

「四枚だと? うちは町で一番雇っている!」

カシュは彼の工場で、包帯を巻いた職人の列を示した。

「だから一番多く守るものがある」

反対は続いたが、カシュは小鍋で試し湯を作った。温水に灰吸い草を浮かべ、職人の片腕だけを洗う。一刻後、洗った側の痒みが引き、赤みも薄れた。

最初に税札へ署名したのは、その職人だった。次に小工場の女主人、最後に大工場主。効果も金の流れも隠せない以上、拒む理由は意地しか残らなかった。

浴場建設には鋳物師が排水蓋を、薬草採りが乾燥葉を、子どもたちが布袋を持ち寄った。寄付品は税と別の欄に記され、一枚の葉まで数えられた。

開業の夕刻、職人たちが腕を緑がかった湯へ沈めた。誰かが「ああ」と声を漏らし、隣の者も同じ声で笑った。

溢れた一滴が白い床を流れる。透明に戻ったその水筋の先で、新しい札が揺れていた。

翌朝、大工場主は炉口を測る木枠を自分で掲示所へ戻した。幅をごまかせば税は減るが、職人の目の前ではできなかったのだ。代わりに彼は、灰を減らす新しい蓋を試すと宣言した。炉口が一段小さくなれば、翌月の負担も正当に下がる。税から逃げるのではなく、汚れそのものを減らせば報われる制度に、職人たちは初めて拍手した。

――働いた汚れは、働いた人に残さない。