荒れ地を歩く豚

獣使いオグマが冒険者組合を追放された理由は、相棒が豚だったからだ。

正確には、牙で岩を割る大山猪のポポンである。だが勇者一行は「見栄えが悪い」と笑い、報酬代わりに辺境の荒れた農地を押しつけた。

初日の畑は、膝丈の茨と石だらけだった。

オグマは全部片づけようとせず、ポポンへ古い馬具を合わせた。納屋で見つけた小さな犂をつなぎ、一列だけ印をつける。

「まっすぐ行けば、夕飯に林檎だ」

ポポンは鼻を鳴らして歩き出した。

犂の刃が土へ入り、茨の根をめくる。途中で大石に当たり、動きが止まった。オグマが外そうとするより早く、ポポンは牙を石の下へ差し込み、ふん、と持ち上げた。

石は畦の外へ転がり、その下から黒く湿った土が現れた。

ポポンは石をどけるたび、掘り返した土へ鼻を突っ込んだ。太い根を見つけると勝手に横へ曲がるので、オグマは手綱を引かず、自分が犂を持って軌道を戻した。相棒を従わせるより、得意な力の向きを借りるほうが早い。茨の根が一株まるごと抜けたとき、地中から冬眠中の蛙が転がり出た。二人は足を止め、蛙が畦へ逃げるまで待ってから続きを耕した。急がなくても、日暮れまでに一列なら届く。その歩幅を二人とももう知っていた。

ちょうど街道を通った元仲間たちが笑う。

「本当に農夫になったのか。豚と畑がお似合いだ」

その直後、森から鎧熊の咆哮が聞こえた。元仲間の馬が怯え、隊列が崩れる。

「オグマ、ポポンを貸せ! あいつなら鎧熊を追える!」

オグマは一列を耕し終え、犂を外した。ポポンの鼻先についた土を布で拭う。

「今日はもう働いた」

「高額で雇う!」

「夕飯のほうが先だ」

小屋の前では、鍋に茸と根菜を入れて煮てあった。蓋を開けると白い湯気が立ち、牛乳の甘い匂いが広がる。

オグマは自分の椀へシチューをよそい、ポポンには約束どおり林檎を丸ごと一つ置いた。

元仲間たちが森の咆哮に青ざめる中、ポポンはしゃくり、と満足そうに果実を噛んだ。

まっすぐ延びた最初の畝は、どんな討伐証明より立派に夕日に光っていた。