葬列の白布
夜明け前の納骨堂で、シェヌには顔がなかった。
鼻も口も削り取られたように平らな皮膚の下で、無数の蛾がもがいている。死者の仮面を盗んだ罰だと司祭は言った。日の出まで顔を得られなければ、蛾が皮膚を破り、彼女の身体を巣にする。
救う方法は、葬列の白布を介して生者の顔を貸すこと。ただし貸した者が白布を外した姿を誰か一人にでも見られれば、顔は戻らない。
ロアクはためらわず、棺に掛かっていた布を二人の頭へかぶせた。
暗闇で額を合わせる。シェヌの平らな皮膚が冷たい。司祭が布の外から祈り、銀の針で二人の影を縫った。
顔を引かれる感覚がした。頬、唇、まぶたが薄い膜となって剥がれ、布の向こうへ滑っていく。
シェヌが息を吸った。初めて口が生まれた音だった。
「ロアク」
それは彼自身の唇と声で呼ばれた。
布を外すと、シェヌはロアクの顔で泣いていた。蛾は死んで床へ落ちる。ロアクは自分の頭だけを白布で包み、顔のないまま彼女の手を引いた。
あとは誰にも見られず、東門の鏡まで行けばよい。鏡の前で布を交換すれば、それぞれの顔が戻る。
二人は眠る街を抜けた。葬列と間違えた番兵たちは頭を垂れた。借り物の顔で歩くシェヌは何度もロアクを振り返ったが、白布の下の彼が笑っているのか苦しんでいるのか、もう見分けられない。東門は目前だった。
そのとき、路地から幼い子どもが飛び出した。母親を探して泣き、ロアクの脚へすがる。
「おじさん、顔を見せて」
ロアクは動けない。シェヌが子どもを引き離そうとしたが、その顔は彼のものだ。見知らぬ男に触れられたと思った子どもは叫び、白布をつかんだ。
布が落ちた。
朝日が門の上から差し、番兵も子どもも、シェヌも、平らな皮膚だけの頭を見た。
東門の鏡は光ったが、もう何も返さなかった。
シェヌは借りた顔で何度も謝った。ロアクは答えようとした。けれど口のない場所がわずかにへこむだけだった。
彼は白布を拾い直し、永遠に自分のものになった無貌を包んだ。鏡の中では、シェヌの隣に立つ白い人影だけが、名前さえ持たず揺れていた。