赤いランプは一つ

夜勤の自動車部品工場で、組立ラインが突然止まった。

保全担当の早蕨由希が呼ばれると、操作画面は真っ黒で、作業員たちは停止したアームを囲んでいた。班長は出荷に間に合わないと苛立ち、「安全装置を一時的に飛ばせないか」と言った。

由希は答えず、制御盤の赤いランプを見た。機械を動かすPLCの表示は生きている。非常停止を監視するインターロックも正常だ。死んでいるのは操作画面だけだった。

「機械は止まったんじゃありません。止まる命令を守り続けています」

画面が消えた瞬間、通信が切れたため、PLCは安全側へ倒れていた。原因を調べずインターロックを外せば、作業員の手が入った状態でもアームが動く。

由希はライン全体の電源を落とさず、操作画面につながる経路を上流から一つずつたどった。新品の通信機器、古い中継箱、床下のケーブル。中継箱だけ、冷却ファンの音がしない。昼間の清掃で電源タップが半分抜け、振動で完全に外れていた。

差し直せば画面は戻る。由希は抜けた理由まで見た。タップは床に直接置かれ、清掃用ホースが当たる位置だった。今夜だけ差しても、次の夜にまた止まる。仮の固定具を付け、昼勤へ配線変更を依頼する札を結んだ。だが由希は、先に全員を柵の外へ出し、工具が残っていないか指差し確認した。復電した瞬間に、停止前の動作が再開する機種だからだ。班長が急かしても、順番を変えなかった。

電源を入れると、黒い画面に工程番号が戻った。由希は自動運転へせず、一本目だけ低速で動かした。アームが部品をつかみ、正しい位置へ置く。二本目から通常速度へ上げた。

止まっていた時間は二十六分。班長は出荷表を見て舌打ちしたが、作業員の一人が由希へ小さく頭を下げた。

由希が中継箱に抜け止めを付け終えるころ、朝番が入ってきた。引継ぎの最中、別ラインの警報が鳴る。

今度は赤いランプが三つ同時に点いた。

由希は工具箱を閉じず、そのまま持ち上げた。一つなら故障、三つなら別の理由がある。