逆向きの矢印
衣料品のクロスドックでは、届いた箱を棚へ置かず、そのまま店別の便へ渡す。速さがすべての夜だった。
午前零時四十分、釘宮俊成は海外便の段ボールが、予定と逆の店舗へ流れていることに気づいた。箱の矢印は東地区を示しているのに、端末のASNは西地区。作業員は大きく印刷された矢印を信じ、パレットを積み替えていた。
「端末が古いんじゃないか」
責任者は紙の出荷指示を優先しようとした。だが俊成は、逆向きになっているのが一ブランドだけだと見抜いた。システム障害なら、ほかの荷物にも出るはずだった。
彼は最初に届いた箱と、最後の箱を並べた。矢印の横に小さく店舗番号があり、番号は端末と一致している。間違っているのは矢印だけ。海外の工場が新しい版下を使った際、左向きと右向きの図を入れ替えたらしい。
「番号で仕分け直します」
「千二百箱あるぞ。出発まで一時間だ」
全部を一箱ずつ読むのでは間に合わない。俊成はパレットの側面にある連番を確認した。番号は店舗ごとにまとまり、切り替わる境界だけが分かればよい。各パレットの先頭と末尾を読み、同じ店舗番号が続くものは一括で移す。境界をまたぐ二枚だけ開き、箱単位で分けた。
途中、作業員が矢印を黒塗りしようとした。俊成は止めた。
「消すだけだと、次の中継倉庫が番号を見落とす。正しい向きの札を上から貼る」
誤りを隠すのではなく、次の人が迷わない表示へ変えた。さらに、輸送中に札が剥がれても判断できるよう、パレット四面へ店舗番号を書いた。
午前二時、東西のトラックが同時に扉を閉めた。責任者は誤版の写真を工場へ送る。俊成は最後のパレット番号をもう一度読み、左右ではなく数字で見送った。
すぐに別ブランドの便が到着した。今度の箱には矢印が一つもなく、すべて同じ茶色だった。
「分かりやすいな」と誰かが笑った。
俊成はASNを開いた。分かりやすい荷物ほど、確認する場所が減って危ないことを、夜勤は何度も教えてくる。