鐘を二度鳴らす学校
森火事から逃げてきた避難民の中には、子どもが六十七人いた。
受け入れ先の樺村の学校は一室、長椅子は三十人分しかない。
「うちの子を立たせて、余所の子を座らせるのか」
親たちの不満に、教師は何も言えなくなった。
執政官エリオは、椅子を奪い合う代わりに鐘の時刻を変えた。
午前は年少組、午後は年長組。出身地では分けない。家業で午後に働く子は午前へ、朝に家畜を追う子は午後へ移れる。変更理由を教師に話す必要はなく、月初めに札を掛け替えるだけでよい。教科書は二人で一冊、使用表を掲示する。費用は各家が冬用穀物二十袋を確保した後、二十袋につき一升を教育倉へ。子のいない家も同率だが、納めた穀物は教師の給金と昼粥以外に使わない。
「なぜ子のいない俺まで」
炭焼きが言った。
「払わない選択もできます。名を赤く書いたり、子を退学させたりもしません。帳簿には納付額だけを残し、不足したら授業日数を皆で相談します」
教師の給金まで数字で示されると、「善意でただ働きさせる学校ではないのか」と心配していた教師本人が、ようやく息をついた。
脅されなかった炭焼きは、翌朝、一升ではなく二升を持ってきた。
「字の読める秤役が増えれば、炭を買いたたかれずに済む」
避難民の仕立屋は正規に買い取ってもらった余り布で教科書袋を縫い、樺村の猟師は折れた長椅子を直した。午後しか来られない牧童のため、教師は朝の課題を板に残した。誰の善意も入学条件にはならない。ただ、役に立てる者が自分で場所を見つけた。
開校初日、教師が一度目の鐘を鳴らす。
樺村の子と避難民の子が混ざって年少組の席へ走った。
正午、炭焼きが鐘楼へ上がり、二度目の鐘を鳴らした。
今度は働き帰りの年長組が、煤や土を頬につけたまま集まる。
夕方、子どもたちは新しい時間割を入口に貼った。
一番下には、避難民の少女が覚えたばかりの字で書き足していた。
『この学校の鐘は、席が足りない合図ではなく、次の授業が始まる合図です』