青いストラップ

午後十時、データセンターへ保守会社の三人が到着した。

通信機器の交換は二時間以内。作業責任者は「停止時間が決まっている」と急かし、社員のカードで扉を開けると、三人まとめて入ろうとした。

警備員の斑目峻は、最後の一人の肩へ手を伸ばさず、扉そのものを閉めた。

「共連れは禁止です。一人ずつカードを確認させてください」

「全員、申請済みだ」

責任者が作業の書類を振る。三人の一時証は青いストラップで、確かに夜間保守用だった。だが斑目は、二人目だけがカードをかざす前に五階の表示を見上げたのを覚えていた。作業の書類の場所は四階、五階は稼働中の顧客区画である。

青いストラップは権限の証明ではなく、申請を確認するための目印にすぎない。色だけで通せば、古い一時証でも同じ扉へ届いてしまう。

斑目は入退室ログを開き、申請番号を照合した。三人目の名前だけ、同じ番号の末尾が一桁違う。前月の作業の書類をコピーして更新した際、別案件の技術者が残っていた。

責任者は声を荒らげた。

「その人がいないと交換できない。あとで直す」

「あとで直すなら、今どこへ入ったかも直せなくなります」

斑目は作業を止める代わりに、手順を分けた。申請済みの二人を社員が四階へ案内し、未登録の一人はロビーで遠隔支援を行う。追加申請が承認された時点で、別の社員が迎えに来る。扉は毎回閉め、社員と訪問者のカードを別々に記録した。

その途中、ロビーに残った技術者が図面を見て顔色を変えた。

「交換対象、五階の番号で書かれてます」

古い作業の書類の機器番号まで残っていたのだ。急いで全員を通していれば、停止中の四階ではなく、動いている五階の機器を抜くところだった。

正しい番号が届き、交換は期限の七分前に終わった。責任者は帰り際、青いストラップを返しながら言った。

「止められた時は、納期しか見えてなかった」

斑目は三本を数え、一本ずつ箱へ戻した。

自動扉の外では、次の空調業者が工具箱を下ろしていた。

「夜間作業の受付を」

斑目は新しい一時証を取り出し、まず行き先の階を尋ねた。