餃子は二十二個

母は餃子を二十二個焼いた。

「芙実は十一個ね。昔から同じ数じゃないと嫌がったでしょう」

丸い皿の上で、焦げ目のそろった餃子が二列に並んでいた。母の前に十一個、芙実の前に十一個。酢醤油の小皿まで左右対称だ。

「今日は六個でいい」

「遠慮しなくていいの。ちゃんと食べないと」

「残りは持って帰る」

「冷凍しておけばいいわ。来週また食べに来たら?」

「家で、海音と食べる」

母の箸が止まった。

「その人の話は食事中にしないで」

「海音」

「聞こえてるわよ」

「じゃあ、その人って言わないで」

母は餃子の羽根を箸で割った。ぱり、と乾いた音がした。

「私は認めたわけじゃない」

「認めてもらいに来たんじゃない。持って帰るって伝えただけ」

芙実は六個を自分の取り皿へ移し、残り五個を保存容器に入れた。母が用意していたのは、花柄の小さな容器だった。昔、弁当の量まで母が決めていたころのものだ。ふたには油性ペンで「ふみちゃん」と書かれている。

芙実は台所の引き出しから無地の容器を出し直した。

「それじゃ味気ないでしょう」

「名前を書くよ」

「あなたの?」

「二人の」

餃子を移し替えると、少し形が崩れた。母のようにきれいには詰められない。けれど五個は、きちんと収まった。

食卓へ戻ると、母は芙実の分だった餃子を一つ、自分の皿へ移していた。

「六個でいいんでしょう」

「うん」

二人は黙って食べた。焼けた皮は香ばしく、中から熱い肉汁が出た。母は芙実の皿へ酢を足そうとしたが、途中で瓶を置いた。

「その……海音さんは、にんにく大丈夫なの」

「明日休みだから大丈夫」

「そう」

名前に「さん」が付いただけで、何かが解決したわけではない。芙実は母の顔を見たが、感謝も許しも口にしなかった。境界線は、握手ではなく、引き直した白い線のように食卓の真ん中に残っている。

食後、無地の容器に油性ペンを走らせた。

〈芙実・海音 五個〉

母は横からのぞき込んだが、書き直さなかった。

帰り際、母がビニール袋を二重にしてくれた。汁が漏れないための、ただの実用だった。

芙実はそれを受け取り、自分たちの夕食を自分たちの家へ持ち帰った。