黄色い点の答案

県立高校の職員会議で、白河奈津は期末試験を生徒へ漏らした教員として吊し上げられた。

「あなたの机から、試験前日に印刷された答案が見つかりました」

教頭の郡司正隆が紙束を叩く。奈津が担任する生徒だけ平均点が高かったことも、疑いを強めていた。

「若い教師は生徒に好かれたくて、何でもする。自主退職なら、新聞沙汰にはしません」

奈津は、机に鍵をかけていたと答えた。郡司は「合鍵など誰も持っていない」と切り捨て、教育委員会へ送る調査書に署名した。

委員会の監査員が、答案を一枚ずつ光へ透かす。

用紙の余白には、肉眼では見えない黄色い点が並んでいる。複合機が印刷のたびに残す識別符号で、機種、時刻、使用者番号を示すものだ。奈津は生徒の個人情報を守る研修で、その存在を知っていた。

「職員室の複合機ではありません」

監査員が読み上げる。

〈校長室前・管理職専用機。印刷時刻、午後十一時四十八分。使用者GNJ02〉

郡司の職員番号だった。

「私のカードを盗んだんだ!」

「では、これも盗まれましたか」

監査員が管理職用機の操作画像を出す。深夜、郡司が答案を印刷し、奈津の机の合鍵を手にしている。機械は大量印刷時だけ、操作者の顔を確認する仕様だった。

郡司は「生徒が奈津から受け取った答案を再印刷しただけだ」と言い換えた。

だが印刷された文書の作成時刻は、その日の午後十一時四十六分。作成者欄にも郡司の番号が残る。彼は奈津のクラスだけ平均点が上がるよう、数人へ答案を匿名送信し、漏洩の実績まで作っていた。

奈津は机の上の自主退職届を裏返した。

教育委員会の責任者が処分書を開く。

奈津のクラスの平均点が高かったのは、試験前に毎朝補習を続けたからだった。答案を受け取ったとされた生徒たちも監査員の前へ出て、郡司から匿名メールが届いたが開かずに担任へ転送したと証言する。その転送を奈津は証拠として保管し、生徒の名を守るため会議まで公表しなかった。

「郡司正隆教頭。試験漏洩および教員への虚偽告発により、懲戒免職とする」