ひび鏡は嘘の昨日を映す

聖宝を盗んだ罪で、ティアナは鐘が三度鳴れば処刑される。

裁判所の中央には、空になった聖櫃と、彼女の部屋から見つかった青い宝石。証人は神殿長ただ一人だった。「夜半、彼女が聖堂から出るのを見た」と、慈悲深い顔で語っている。

ティアナには反論する証拠がない。ただ、牢へ運ばれる途中で倒した記憶喰いの小鬼が、一枚だけ品を落としていた。

縁の欠けた、手のひらほどの鏡。

【雑貨:ひび割れた身だしなみ鏡】

【顔を映すためのものです】

一度しか像を結ばないらしい。看守は「最後に自分の顔でも見ろ」と笑った。

一つ目の鐘が鳴る。

ティアナは鏡を自分へ向けず、証言台の神殿長へ向けた。

「盗んだのは私ですか」

「そうだ。神に誓って」

二つ目の鐘と同時に、鏡のひびが青く光った。

そこに映ったのは現在の顔ではない。昨日の夜、同じ顔が何を隠したかだった。

神殿長が聖櫃から宝石を取り出し、ティアナの部屋へ入る。机の引き出しへ宝石を置き、衛兵の巡回記録を書き換える。さらに、聖宝を売る相手へ送った密書まで鏡面に映った。

裁判官が立ち上がる。神殿長は鏡を奪おうとしたが、映像は法廷の白壁すべてへ広がっていた。

神殿長は「幻術だ」と叫び、証拠を消すため聖櫃へ炎を放った。ところが鏡は、その炎を放つ直前に彼が考えた逃走路まで映した。法廷の裏口、用意した馬、国外口座の印章。衛兵は指示を待たず、三か所すべてを封鎖する。

裁判官はティアナへ向き直り、判決文を破った。謝罪は短かったが、彼女の鎖を外す手は震えていた。

三つ目の鐘は鳴らなかった。鐘楼の係が、槌を下ろしたからだ。

ティアナの鎖が外される。彼女は神殿長の横を通り過ぎ、青い宝石を自分の手で聖櫃へ戻した。冷たい石が正しい場所へ収まる音は、判決より鮮やかだった。

役目を終えた鏡は砕けず、ひびだけを金の線へ変える。

【意図的な虚偽の過去を完全再生】

【世界初記録――UR《昨日を告発する真実鏡》の所有者をティアナに固定】