一枚を十二票に
蒲生直は、赤い紙を十二片に裂き、投票口へ流し込んだ。
向かいの蓬田芽衣と黒津万丈は、そろって青い紙を一枚ずつ入れたあとだった。
「反則だろ!」
黒津が透明な箱へ手を伸ばす。だが投入口の刃が閉じ、彼の指先を弾いた。
壁には、たった一行。
《箱内の赤い紙片と青い紙片を数え、多い色の紙片を入れた者だけ生存する》
入室時、三人には赤青の紙が一枚ずつ渡された。全員がそれを「一票」と呼んだ。主催者は一度もそう呼んでいない。
黒津は開始直後、芽衣へ青を持たせた。「二人で青なら勝ちだ。蒲生が赤でも二対一」
直は返事をせず、膝の下で赤紙を細長く折っていた。折り目は十二本。紙には透かしも通し番号もない。箱の底にある光学器は、輪郭ごとに一片として数えるだけだと、最初の試験点灯で見抜いていた。残り五秒で一気に裂いた。
集計器の風が紙片を舞い上げる。
赤、十二片。
青、二片。
多数色、赤。
芽衣の顔が青ざめた。「でも、赤を入れた人は一人だけ」
直は答えず、十二片が完全に落ち切るのを見届けた。途中でつながっていれば一片と判定される。折り目を均等にした理由はそこにあった。
《赤い紙片を入れた者、蒲生直》
《生存条件を確認》
「多数決は人数で決めるものだ!」黒津が叫ぶ。
「普通の多数決ならね」
直は箱の底を指した。そこには《紙片計数器》と印字されている。《投票箱》ではない。
「規則は、参加者の多数とも、一人一枚とも言っていない。渡されたのも投票用紙じゃなく、ただの色紙だ。紙片を数えると明記してある」
芽衣は自分の青紙を見つめた。「どうして最初から裂かなかったの」
「二人が真似するから。あなたたちが一枚ずつ入れ、投入口が閉じる直前まで待った」
箱の送風口が止まり、十二対二の表示が固定される。黒津の首輪が警告音を上げる。彼はなお箱を蹴ったが、赤い破片が小さく跳ねるだけだった。
直の首輪が外れる。
「数で勝つには、仲間を増やす必要はない」
彼は十二枚の赤を一瞥し、開いた扉へ歩いた。
「数える単位を変えればいい」