七つの鍵穴
地下牢の錠前は、七つあった。
アルメシアは最初の扉へ掌を当て、鍵喰いの悪魔を呼んだ。
契約は、どんな錠も一つ開ける代わりに、その錠前を彼女の身体へ移すというものだ。扉は自由になる。代わりに皮膚へ鍵穴が生まれ、悪魔が持つ鍵で、その場所の働きをいつでも止められる。
一つ目の独房には、拷問で声を失った弟グネスがいた。
「開けて」
鉄扉が音もなく開き、アルメシアの右掌に真鍮の鍵穴が穿たれた。悪魔が一度鍵を回すと、指が固まり、開かなくなる。見せしめのようにすぐ戻された。
二つ目で老兵を解放する。鍵穴は左膝へ移り、脚が一瞬折れた。
三つ目は母子の鎖。喉元に小さな穴が開き、声が止まる。悪魔が鍵を戻すまで、彼女は息もできなかった。
四つ目、五つ目。肩と右目。囚人たちは増え、細い通路を走る。背後で見張りの鐘が鳴った。
六つ目は水門だった。開かなければ出口の橋が上がらない。アルメシアは命じ、腹の中央へ黒い鍵穴を受けた。腸が一瞬止まり、冷たい痛みが全身を巡る。
残るは外門だけ。
悪魔が耳元で囁く。
――七つ目は、空いている場所が少ない。命の近くになるぞ。
衛兵の足音が迫る。グネスが首を振り、アルメシアの袖を掴んだ。彼一人なら水路へ潜って逃げられる。だが母子も老兵も泳げない。
アルメシアは外門へ手を置いた。
「開けて」
石門が左右へ割れ、夜風が流れ込む。
同時に胸骨の中央へ、七つ目の鍵穴が開いた。穴の奥で心臓が脈打つのが見えた。悪魔の鍵が差し込まれ、半回転する。
鼓動が止まる。
アルメシアは倒れながら、囚人たちが門を越えるのを見た。最後にグネスが戻り、胸の鍵を掴む。鍵には触れられない。影でできている。
――全員が外へ出るまで止めておこう。契約は正確だ。
悪魔が笑う。
グネスは姉を背負い、門外へ踏み出した。瞬間、鍵が戻り、心臓が激しく動き出す。アルメシアは息を吹き返した。
「姉さん」と弟が泣いた。
彼女も名を呼ぼうとしたが、喉の鍵穴が再び回されていた。声だけではない。言葉を作る舌の動きまで、きれいに施錠されている。
七人は逃げ切った。
けれどその夜からアルメシアの身体は、鍵喰いの持ち歩く七本の鍵で開閉される牢獄になった。眠るたび、どこかの鍵が回り、朝には指、脚、目、声のうち何を失っているか分からなかった。