三つの払い方

国境村トレスの「夜番税」は、各家から成人一人を月三夜、見張り台へ出す決まりだった。

 人手の多い農家には軽い。だが幼子を抱える仕立屋ユーディには、店を閉め、子を置いて夜通し立つしかない。出られなければ銀貨一枚の罰金。銀貨一枚は十日分の食費だった。

 彼女が三度目の罰金通知を破いた春、村長に選ばれたのは、書記官出身のユーディ自身だった。村人たちは「夜番もできない女に村は守れない」と囁いた。

 ユーディは反論せず、見張り台の前へ三つの箱を置いた。

 第一の箱には木札。夜番一回で一枚。

 第二の箱には麦札。麦二籠で一枚。

 第三の箱には銅貨札。銅貨四枚で一枚。

 各家は月三枚を、どの組み合わせで納めてもよい。集めた麦と銅貨は、追加の夜番を引き受けた者へ、一枚につき麦一籠と銅貨二枚で渡す。残りは灯油代にする。箱の中身と当番表は毎朝公開する。

「金持ちは金で逃げるだけだ」

 猟師が言った。

「逃げるのではなく、時間を出せる人へ対価を渡します」

「では貧しい者は夜ばかりか」

「木札を選ぶかは本人が決める。必要な木札の総数を超えたら、募集を止めます」

 誰も余分に働かされず、誰も事情を説明して免除を乞わなくてよい仕組みだった。

 最初の月、ユーディは仕立て仕事で得た銅貨札二枚と、夜番一回を納めた。猟師は夜番六回を希望し、麦三籠と銅貨六枚を受け取った。

「冬矢を買える」

 彼は罰ではなく仕事として塔へ上った。

 足の悪い老人は麦札三枚。若い双子は木札を合計八枚申し出たが、ユーディは必要数の六枚で止めた。

「余分な善意まで税にしません」

 その言葉で、村人はようやく笑った。

 月末、当番表には空欄が一つもなかった。灯油も余り、誰の家にも罰金札は届かなかった。

 初雪の晩、ユーディは自分の番を終えて塔を降りる。次の猟師が自分から階段を上り、麦袋を肩に笑った。

 見張り台の火が灯ると、三つの箱の上の札が赤く照らされた。

『時間、麦、銅貨。出せるものを出し、守る夜は同じ』

 国境の闇に、途切れない最初の灯が伸びていた。