三歩しか飛ばない弓

溶岩が塔を満たす中、羽鳥アオイは真上へ初心者弓を放った。

《足場矢》

矢は射程の終点で停止し、十秒間だけ足場になります。

《曲がった短弓》

射程:三メートル

全弓中、最短。

矢は頭上三メートルで止まり、青い板へ変わった。アオイは飛び乗り、次の矢をさらに三メートル上へ撃つ。

伝説弓の射手たちは百メートル先の天井へ矢を刺したが、高すぎて誰も届かなかった。強い弓ほど、足場にするには遠すぎる。

「階段を作れ!」

アオイは三歩ずつ空を登る。下では溶岩獣が仲間を追い詰めている。十秒経った矢は消えるため、立ち止まれない。

一本、二本、三本。短い射程が、ちょうど人の跳べる間隔になる。

塔の中腹で矢筒が空になった。最後の足場が消えるまで八秒。上の避難口まで六メートル。

仲間の長弓使いが、自分の矢をアオイへ投げた。撃てば三メートルで止まる。弓の射程は武器側で決まり、矢の格は関係ない。

全員が矢を手渡し始める。希少な爆裂矢も、神殺しの矢も、短弓から放てばただの小さな足場になった。

最後の一枚へアオイが乗り、避難口の鎖を切る。扉が開き、階段状の矢が塔の外まで連結された。溶岩獣は倒していない。それでも住民と攻略隊は全員、空へ逃げられる。

外から見ると、足場矢は巨大な「上へ」の文字になっていた。

《溶岩獣討伐:未達成》

《足場矢連続設置数:二百七》

避難する子供たちは、消える前の足場へ一人ずつ名前をつけた。《一歩目》《怖くない》《次は右》。アオイはその声を聞きながら矢を放ち、目の前の三メートルだけを確実に増やした。

百メートル先の出口を一発で射抜く英雄はいなかった。だが三歩先なら、次の人へ手を伸ばせる。

最後の矢が消えた後も、空を登った順番だけは全員の歩行履歴に残った。

アオイの弓は出口へ届かなかった。だから二百七回、誰かが次の足場へ届いた。遠くを射抜く武勇より、近くの一人を渡す射程が最後まで残った。

《塔攻略成功――最長射程では届かなかった場所へ、最短射程が道を作りました》