交換相手は非常札

斑目珠生は、自分の二を壁のくぼみへ差し込み、代わりに赤い非常解錠カードを引き抜いた。

堀之内弦と山辺絹香が息を呑む。非常札の中央には、大きな星印がある。

壁の規則は一つ。

〈各参加者はカードを一枚、別のカードと交換する。終了時、星印のカードを持つ者を解放する〉

配られた三枚は、月、太陽、雲。誰も星を持っていない。三人は交換を繰り返すうち、裏面のどこかに星が現れるのだと思い込んだ。

珠生だけは、出口脇の非常札を見た。透明ケースには「開扉時、この場所へ代替カードを差し込むこと」とある。彼女は二の数字が印刷された月札を差し込み、非常札を抜いた。ケースの重量センサーは交換成立を示す緑へ変わる。月札も非常札も、厚さだけは同じ規格だった。

『設備カードは対象外です』

「対象を配布札に限定していない。別のカード、としか書いていない」

弦が非常札を奪おうとするが、珠生は首輪の鎖を利用して壁際へ下がる。絹香は自分の太陽札を別のくぼみへ差そうとした。しかし非常ケースは一つしかなく、代替カードで封印済みだ。

残り一分。弦は雲と絹香の太陽を強引に交換し、交換義務を終える。絹香も同じ交換に参加したとしてランプが点く。珠生は非常札を両手で持ち、星をカメラへ向けた。赤い表面は勝敗札より派手で、見落としていた方が不自然なくらいだった。

『その星は勝敗用の意匠ではありません』

「規則は意匠の用途を問っていない。星印があるカード」

終了ベル。読取光は月、太陽、非常札を走査し、赤いカードの星で止まる。

〈勝者、斑目珠生〉

同時に、非常札がケースから抜かれたままだったため、出口の安全錠も解除された。

弦が乾いた声で笑う。

「勝つカードが、最初から壁にあったのか」

「主催者は、私たちが配られたものだけで世界ができていると思わせたかった」

珠生は非常札を扉の読取部へ当てる。

「でもカード交換なら、盤外のカードも相手になれる」

星が緑に光り、勝利判定と非常解錠が同じ音で重なった。