北風を止めた藁束

バルトが買えた土地は、国境のさらに外れだった。

家は残っていたが、北側の壁板が何枚も外れ、風が室内を横切っている。暖炉へ薪を足しても、熱はすぐ畑の向こうへ逃げた。

半獣人のバルトは、戦争中だけ「頼れる盾」と呼ばれた。平和になると、牙も大きな体も町には不向きだと言われた。退役金で買えたのが、この廃農場である。

彼は穴だらけの壁を見て、兜を脱いだ。

今日の敵は北風一つでいい。

壁の向こうには雪をかぶった山が見えた。砦では、その方角から来る敵を何年も待った。眠っていても風音で剣へ手が伸びる。だからバルトは、戦う必要のない音を家の中から一つずつ追い出すことにした。

納屋に残っていた藁を束ね、泥と石灰を練る。太い指では細工が苦手だと思われていたが、盾の革紐を毎晩自分で補修してきた手だ。藁束を隙間へ詰め、木板で押さえ、泥を塗る。耳を澄ませ、風の音が残る場所を探しては、もう一握り詰めた。

泥が乾くまで、彼は壁へ背を預けずに待った。急いで暖炉へ寄れば、まだ柔らかな部分を崩してしまう。巨体を小さな椅子へ畳み、壁が自分を支えられるようになるまで見守った。

日が沈む直前、最後の隙間を塞いだ。

ごうごう鳴っていた部屋が、急に静かになる。バルトは落ち着かず、尾を一度振った。静けさの中では、暖炉の薪が爆ぜる音まで大きい。

鍋に茹でた芋を入れ、厚切りの燻製肉を焼く。脂が鉄板を走り、じゅわりと芋へ染みた。塩を振るだけで、腹の底が鳴る。

扉を小さく叩いたのは、隣の農場の娘だった。両手で黄色いバター壺を抱えている。

「お母さんが、煙が上がった家には挨拶しなさいって」

娘は牙を見ても逃げず、塞いだ壁をぺたぺた触った。

「もう風、入らない?」

「ああ」

「じゃあ、冬になってもここにいる?」

バルトは答える前に、胸の奥が妙に詰まった。戦場では「死ぬまで持ち場を離れるな」と命じられた。残るかどうかを尋ねられたのは初めてだった。

「いるつもりだ」

娘は満足してバター壺を渡した。バルトは代わりに、焼けた芋を一つ紙へ包む。

扉を閉めると、北風はもう追ってこなかった。芋へバターを載せれば、白い湯気の上で黄金色に溶けていく。

誰かの盾ではなく、隣人になれた一日の味がした。