十四枚目の雹

野々村梓は太陽電池メーカーで、試験映像を編集する外注スタッフだった。大型物流倉庫向けパネルの採用会議に、雹衝撃試験の映像を再生するため呼ばれた。

映像では直径二十五ミリの氷球を十五回当てても外観異常なし。営業部長の新田は、二十年保証の契約書を倉庫会社へ差し出した。

梓は再生時間の表示が一瞬跳ぶことに気づいた。十四発目の直前、00:42:18から00:42:20へ二秒飛んでいる。

元のカメラカードには、その二秒が残っていた。十四発目で表面ガラスに白い亀裂が走り、出力が二十三パーセント落ちている。十五発目の前にパネルを交換した場面まで映っていた。

「編集上の不要部分だ」と新田は言った。「最終的に十五回耐えた製品を示している」

梓は映像の右下にある試料番号を拡大した。十三発目までP-1408、交換後はP-1418。数字の0と1だけが違う。会議用映像では番号部分に会社ロゴが重ねられていた。

倉庫会社の技術者は、映像だけでは試験記録にならないと言った。

梓は衝撃装置の自動ログを出した。十四発目の時刻に電流値が急落し、その二分後に試料登録が変更されている。試験責任者の電子署名は交換前の午後三時十二分。合格報告書は交換後の午後三時十五分に作られていた。

新田は外注契約の打切りをほのめかした。梓は来月の家賃を思った。それでも編集ソフトの履歴を開く。削除区間には「割れ・絶対使用不可」と新田自身のコメントが残っていた。

倉庫会社の役員が二十年保証書を裏返した。

梓は削除前の映像に付いていた音声も再生した。亀裂音の直後、新田が『十四発で交換、番号はロゴで隠す』と指示している。新田は自分の声ではないと言ったが、同じ日の会議録音と声紋が一致した。二秒の映像には、二十年保証より長い言い逃れは入らなかった。

交換された二枚の重量差も、装置の秤に記録されていた。

十四枚目の雹が画面で静止したまま、屋根一万枚分の採用決裁も止まった。