同じ間違い
答案が返された日、私は九十八点だった。
親友と好きな人は、そろって四十六点。
「同じところ間違えてる」
好きな人が親友の答案をのぞき込み、笑った。
二人は記述問題で、まったく同じ勘違いをしていた。赤ペンで引かれた線まで似ている。
私は二人よりずっと高い点なのに、その会話へ入れなかった。
「次のテスト、一緒に勉強しない?」
好きな人が親友へ言った。
親友は一瞬、私を見た。
私たちが同じ人を好きだと知っているからだ。
「三人でやろうよ」
親友が言い直した。
「いいね。先生役お願い」
好きな人は私へ笑った。
先生役。
隣に座る人でも、同じ間違いをする人でもなく、正しい答えを教える人。
放課後、図書室で三人の勉強会が始まった。
私は問題を説明した。二人は同じところで首をかしげ、同じところで笑った。私の解説を聞きながら、互いのノートへ落書きをした。
役に立てば立つほど、二人が近づいていく気がした。
「ここ、どうしてこうなるの?」
親友が聞く。
私は答えようとして、声が詰まった。
「ごめん、目にゴミ入った」
涙を隠すため、参考書で顔を覆った。
好きな人が心配そうにのぞき込む。
「保健室行く?」
「大丈夫」
親友だけが、嘘だと分かっていた。
勉強会の帰り、好きな人と別れたあと、親友が立ち止まった。
「もうやめよう」
「勉強会?」
「三人でいるの」
私は驚いた。
親友は泣いていた。
「あなたが説明して、私が隣で笑って、あの人が私を見るたび、私も嬉しい。でも同時に、あなたの顔を見るのが怖い」
「じゃあ、どうするの」
「次は二人とも、自分で告白する」
親友は答案を取り出した。
赤い四十六点の横に、小さく日付を書いた。
「この日まで。逃げない」
私も自分の答案を出した。九十八点。正解ばかりなのに、今の私には何も教えてくれない紙だった。
二週間後、私たちは別々の日に告白した。
好きな人が選んだのは、親友だった。
次のテストで、二人は七十点を超えた。私は百点だった。
答案を受け取った瞬間、親友がこちらを見た。
私は笑って親指を立てた。
放課後、一人で答案を折ったときだけ泣いた。
正しい答えを出せても、選ばれるとは限らない。
それでも、同じ間違いをして笑う二人を嫌いにはなれなかった。