嘘を燃やす蝋燭

異端審問官が《証明の蝋燭》をカルネスの両手へ押しつけた。

「無実なら恐れる必要はない」

その蝋燭の光の中で誰かが嘘をつくと、嘘を聞いた保持者の肉が蝋へ変わる。教会は被告に蝋燭を持たせ、司祭たちが偽証するたび、被告を白い像へしてきた。像になれば反論できず、「神が罪を示した」と片づけられる。

カルネスの罪状は、地下墓地を荒らしたことだった。実際に子どもの骨を運び出したのは、聖遺物商と結んだ院長ドレイである。

「質問をしてよいですか」

「最後の言葉として許す」

カルネスは火を胸の高さへ掲げた。

「地下墓地の鍵は一本だけですね」

ドレイが頷く。「そうだ」

熱が走り、カルネスの左小指が乳白色の蝋になった。

傍聴席がざわめく。嘘だと蝋燭が示した。

「鍵は院長が保管している?」

「違う」

薬指まで蝋になる。

「骨を売った商人を知らない?」

「知らん」

白さが手首へ上がる。

審問官は質問を止めさせようとしたが、カルネスは蝋の指で燭台を抱えた。落とせば火は消え、証明も終わる。

「昨冬、埋葬された十四人の子どもは、全員墓にいる?」

ドレイの唇が震えた。

「いる」

熱い蝋が腕を覆い、肘を固めた。代わりに、聖堂の全員が院長の答えを嘘だと知る。

カルネスは質問を重ねた。金貨の行方。偽の聖遺物証明。口封じに消された墓守。返答のたび、白い層が肩、胸、首へ広がる。

「黙れ!」

「最後です」

蝋は顎まで来ていた。口が塞がる前に、彼は祭壇を指した。

「骨は、あの下にはない?」

ドレイは群衆を見回した。真実を言えば終わる。嘘を言えば、カルネスが像になるだけだと思った。

「ない」

炎が青く伸びた。

カルネスの顔を蝋が覆う。鼻も頬も唇も滑らかな白へ沈み、最後に瞼が閉じた。人の形をした一本の大蝋燭が、法廷中央へ残る。

だが群衆は祭壇を壊していた。石板の下から、小さな頭蓋骨と商人の焼印が次々に出てくる。

ドレイが逃げようとすると、審問官自身が腕をつかんだ。

白い像の胸で、まだ証明の火が燃えている。

その炎に照らされ、院長の影だけが黒く震えた。

カルネスの顔は失われたが、彼が聞いた最後の嘘は、聖堂中の誰の顔からも消えなかった。