城門前から二百台が消えた

王都西門では、夜明けごと荷車二百台が一斉に押し寄せた。

早く並んだ者から検査を受けられるため、御者は前夜から場所を取り、朝には三里の列ができる。青菜は日差しで萎れ、牛乳は酸っぱくなり、門番は怒鳴り声で伝票を読み違えた。市場組合は遅延を新任係の伊吹織仁のせいにした。

織仁は門を広げず、門番も増やさなかった。

二百枚の木札へ、鐘一つ目から四つ目までの時刻を刻み、商会ごとに渡した。一刻に来る車は五十台だけ。早く来ても札の時刻まで検査しないと告げる。

「列へ並ぶ自由まで奪う気か」

商人たちは怒ったが、翌朝、前夜から来た車は三台しかなかった。鐘一つ目に五十台が到着し、検査台へ四列で進む。最初の組がほぼ通り終えたころ、二つ目の札を持つ車が坂の向こうから現れた。

門前に止まる車は常に五十台以下。御者は自宅で眠ってから来て、馬も餌を食べ終えている。門番は一刻に二十二台しか通せなかった前日から、六十台へ処理数を伸ばした。

正午前、二百台目が門を通った。

昨日は夕刻まで残っていた列がない。廃棄された青菜は四十七籠から一籠、酸っぱくなった乳壺は三十二本から零。街道の旅人まで、止まらず門を通れた。

青菜商は鐘三つの札を持って畑を出たため、夜露を含んだまま朝まで街道へ置く必要がなかった。牛乳商も搾乳を一刻遅らせ、門を通る直前まで井戸水で壺を冷やせた。門を速くしたのではなく、二百台が同じ時刻へ集まる理由を消したのだ。

門番の照合記録では、伝票の読み違いが前日の十六件から一件へ減った。後ろから罵声を浴びず、一台ずつ落ち着いて荷札を読めたためだ。検査を抜けようと割り込んだ車も、札の時刻が違うだけで止められた。

商人たちは列の前を買う場所取り屋へ銀貨を払わずに済み、その銀貨を冷却布や新しい籠へ回すと話し始めた。空になった野営地は、翌週から朝市の臨時売場へ使われることになった。

市場組合長が、使われなかった野営地を見回す。列を商売にしていた場所取り屋だけが、空の縄を握っていた。

城門長は翌月分の木札を織仁の机へ積んだ。

「西門だけでは足りん。四門すべての到着時刻を、お前が割り振れ。王都輸送調整官に任命する」